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第8話08死の息吹は一歩一歩近づいている

「そういうことなら、登録されているクエストの多くは、黄金級や巨獣討伐ばかりだけど……今の私たちには、到底無理だよね。」


ニックスは掲示板を見上げながら、少し悔しそうに息を吐いた。そこには数えきれないほどの依頼書が貼られており、そのほとんどが熟練の冒険者たちしか受けられないような難易度の高いものばかりだった。


「そうだね……でも、見て、あそこに青桐級のクエストがあるよ。」


フィードが指差した先には、一枚の紙が貼られていた。確かに青桐級なら、初心者向けの依頼ではあるものの、報酬も期待できないようなものが多い。ニックスは少し眉をひそめながら、そのクエストをじっくりと見つめた。


「うーん、やっぱり報酬はあまり良くないね。でも……あれ?こっちのクエストは、報酬が妙に高いぞ?青桐級なのに、どうしてこんなに報酬が設定されているんだろう?」


「もしかすると、危険度は低いけど、純粋に難易度が高いクエストなのかもしれないね。」


フィードは腕を組みながら、慎重に推測を重ねた。


「例えば、特定の場所へ行って、珍しい薬草を採取するクエストとか……命の危険はないけど、険しい山道を進む必要があるとか、特定の条件下じゃないと採れないとか、そういう厄介な依頼なのかもしれないな。」


「なるほど……とりあえず、詳細を見てみようか。」


ニックスはその依頼書を慎重に読み上げた。


「北の深い山の奥にある洞窟で、巨大な熊の怪物が目撃されているらしい……え、それってどんな怪物なんだろう?」


「まぁ、熊のような怪物なんじゃないかな。」


フィードは軽く肩をすくめながら言った。


「防御力は高いけど、攻撃速度は遅いはずだ。弱点を狙えば、うまく戦えるかもしれない。」


「そうだね。それなら、戦い方次第でなんとかなるかもしれない……よし、行こう!」


ニックスが力強く頷くと、フィードも微笑んだ。


「そうだな。しかも、この洞窟はここからそう遠くないみたいだし。」


二人は意気揚々と冒険者ギルドを出発し、目的地である北の山へと向かっていった。その背中が次第に遠ざかっていく。


——しかし、その直後——


「……あれ?」


ギルドの奥から、職員の一人が小走りでやってきた。手に持った資料をめくりながら、掲示板に視線を走らせる。


「このクエスト、何かおかしいな……」


彼は額に軽く手を当て、疑問を噛み締めるように唸った。


「確か……この辺りでは、最近殺人鬼が出没していたって話があったはずだ。となると、このクエストは本来、大地級にするべきだったんじゃ……?」


慌てて掲示板に貼られていた依頼書を手に取った職員は、その内容を確認する。しかし、そこにはまだ誰のサインもなかった。


「……よかった、まだ誰も受けていないみたいだな。」


そう安堵した次の瞬間、彼の脳裏に一つの疑問がよぎった。


——さっき、ここにいた二人組は、何のクエストを持って行ったんだ?


その疑念が、すぐに現実のものとなることを、この時の彼はまだ知らなかった——。



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