第53話 17 大軍出撃
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時は再び現在へと戻る。会議室の空気は重く沈み、ニックスがゆっくりと口を開いた。
「つまり、今現在、彼らの正確な位置は一体どこなんだ?」
バイスターは鋭い視線を彼に向け、その声にはわずかな焦りが滲んでいた。
「現時点では、ミスピリットが彼らをある区域にて感知し、それ以降は移動していません。」
ニックスは冷静な表情で、毅然とした口調で答えた。「その場所は、以前我々が調査した――クリスタルレイクです。」
王は眉をひそめ、間髪入れずに口を挟んだ。
「何かを発見したのかもしれんな。でなければ、なぜそこで動かなくなる!」
「その可能性は低いでしょう。」
ニックスは軽く首を振りつつも、目は依然として眼前の地図を見つめていた。
「もし彼らがミスピリットに気づいたなら、反応は通常二つです。ひとつは、追い払うこと。ですがその場合、ミスピリットは即座に私の元へ戻ってきます。もうひとつは、完全に消滅させること。しかし、そうなれば私は彼らの位置を感知できなくなる。」
彼はそこで少し言葉を切り、口元にかすかな笑みを浮かべた。
「ですが、今も追跡できているということは、ミスピリットがまだ彼らに付いているという証拠。そしてそれは、私が手にする――精霊の剣のおかげです。」
バイスターはうなずいた。賛同と、そしてどこか賞賛の色を込めて。
「クリスタルレイク……あの周辺は魔力が非常に混乱していて、通常の探知はほとんど無意味に等しい。だが、お前はミスピリットで追跡を成し遂げた……ニックス、本当に信じられん。」
彼の目には、驚嘆の光が宿っていた。
「世界初の“幽霊剣士”として、お前はミスピリットと魔物を融合させ、さらには自らもそれらと一体となり、死角のない戦闘形態を構築した。こんな戦士……前代未聞だ。」
「さて――」バイスターは身を翻し、マントを翻す。
「直ちに騎士団を招集する。明日の夜明け、我々は出発だ!」
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翌朝。
まだ陽が差し切らぬ早朝、騎士団本部はすでに熱気に包まれていた。重い鉄靴の足音が広場に響き渡り、百人千人の騎士たちがきっちりと整列し、まるで動かぬ鋼鉄の壁のように、完璧な正方形の陣形を築き上げていた。その威容は、ただただ圧巻だった。
バイスターは銀白のマントをまとい、騎士団本部の高台に立ち、眼下の勇士たちを見下ろす。
「諸君――おはよう!」
その声は力強く、まるで朝の鐘のように広場全体に響き渡った。
「すでに諸君も理解しているだろう。本日の集結の目的は――」
彼は一語一語を重く刻むように、宣言した。
「我々は――魔法石を奪還するために集った!」




