第8話07冒険者レベル
新たな挑戦の始まり
朝日が街を柔らかく照らし、活気に満ちた音が四方から響いてくる。ニックスは宿の部屋の扉を静かに開き、ゆっくりと階段を下りた。
宿の大きな木製の扉を押し開けると、街の空気が一気に流れ込んできた。澄んだ空気にはパン屋の焼きたてのパンの香ばしい匂いや、遠くの市場から漂うスパイスの香りが混じっている。石畳の道を踏みしめながら、ニックスは改めて自分の現状を考えた。
「持っているお金は、あと3日分か……」
財布の軽さを思い浮かべ、ため息をつく。
「まずはお金を稼がないとな。でも今はフィードがいる。一緒にクエストをこなせば効率もいいはずだ。」
そう決めると、ニックスは迷いなく冒険者ギルドへと足を向けた。
冒険者ギルドでの再会
冒険者ギルドの建物は威厳ある佇まいをしており、巨大な木製の扉には精巧な彫刻が施されていた。ニックスは両手で扉を押し開ける。
中に足を踏み入れると、広々とした空間に活気が満ちていた。各テーブルには鎧を着た冒険者たちが酒を片手に話し込んでおり、カウンターでは受付嬢が忙しそうに書類を整理している。奥には武器を背負ったまま談笑するグループの姿もあった。
扉の近くの椅子に座っていたのは――フィードだった。
「おう、ニックス!」
フィードは気楽そうに手を振る。
「待ってたぞ。」
ニックスは驚きながら歩み寄る。
「……どうして僕がここに来るって分かったんだ?」
フィードは笑いながら肩をすくめる。
「簡単さ。君はそんなにお金を持っていないだろ? たとえ持っていたとしても、どうせここに来るのは間違いないと思ったからな。」
「その通りだな。」
ニックスは苦笑しつつ、フィードの読みの鋭さを再認識した。
「じゃあ、一緒にクエストを受けないか?」
「もちろんさ。せっかくこの世界に来たんだから、存分に冒険しようじゃないか。」
二人は意気投合し、クエスト掲示板へと向かった。
クエスト掲示板の前で
掲示板には無数のクエスト依頼が貼られており、それぞれ異なる難易度や報酬が記されていた。羊皮紙には手書きの文字が躍り、一部の紙には血のような赤い印が押されているものもあった。
「うわぁ……どれも難しそうなクエストばかりだな。」
ニックスは目を細め、じっくりと掲示板を見渡した。
「どうやってクエストの難易度を見分けるんだ?」
フィードが手慣れた様子で説明を始める。
「下の印章を見るんだよ。印章の種類によって、難易度が決まってるんだ。」
ニックスは印章を一つずつ確認する。
「どんな種類があるんだ?」
フィードは掲示板を指差しながら、説明を続けた。
「印章は全部で九段階に分かれてる。簡単な順から、青桐、水流、白銀、大地、黄金、巨獣、ダイヤモンド、災難、魔爪。これが難易度の低いものから高いものへの順番だ。」
「なるほど……。」
ニックスは感心しながらうなずいた。
「そして、それぞれの級には三段階があって、一段、二段、三段と昇格する仕組みだ。三段を超えると、次の級に進めるってわけさ。」
「ふむふむ……つまり、俺たちはまず一番簡単な青桐級の一段から始めるわけか。」
「そういうことだな。」
フィードはニヤリと笑いながら、掲示板に手をかけた。
「さぁ、俺たちの初仕事を選ぼうぜ。」
ニックスも微笑みながら、掲示板に目を走らせた。
新たな冒険の幕開けを感じながら――。




