第53話 09 絶対的な圧迫
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「どうやら、君たちにはここで退場してもらう必要があるようだ。」
エレメントの身体から、無数の虹色の光が一気に解き放たれた。それらは空へと吸い寄せられるように集まり、やがて大きなうねりとなって空全体を包み込んでいく。
「見えるか?異なる魔力が組み合わさり、織りなすこの光景。美しいとは思わないか?この美しさは、この世界の醜く濁った闇に対する、皮肉のような対比だ。」
空を覆った虹はやがて一つとなり、天の色すら塗り替えていく。そして、エレメントは静かに言い放った。
「さあ皆さん、最後にこの“彩の雨”をご覧ください。」
その光景を見たニックスたちは、胸に不安を覚えた。
(冗談だろ……あれ、どうやって防ぐんだ……)
誰もが手立てを失ったその瞬間、一人の人物が静かにエレメントの肩を叩いた。
「やけに見当たらないと思ったら、こんなところにいたのか。……その少女を捕まえに来たんだろ?」
その声を聞いたエレメントは、慌てて振り向いた。
「しょ、少し待ってください、ボス。聞いてください、これが一番安全な方法だと思ったんです!魔法石をボスが吸収するには、やはり僕が動くしかなかったんですよ。ボスに何かあったら、“創世計画”が水の泡に――!」
狼狽しきったエレメントの言葉に、男は静かに問い返した。
「そんなに俺が心配か?“創世”の意味は、この世界を変えることにある。腐りきった連中をこの世から消し去る……それが目的だ。だが、そんな連中が作った“存在”に、創世を託すなんて、本末転倒じゃないか?」
その言葉に、エレメントの顔が青ざめる。
「本当に……すみませんでした、ボス。もう二度と勝手な真似はしません……僕が、考えが足りませんでした……!」
エレメントは深々と頭を下げ、声を震わせながら謝罪した。
「そんなに怯えた顔するなよ。まるで、俺が今すぐお前を殺すみたいじゃないか。俺って、そんなに怖いか?」
その言葉に、エレメントも気まずそうに笑った。
「ボスの魔力の圧は凄まじいですから……威圧感が桁違いで……」
「俺の名は、デスペだ。いいか、創世の道も、我々が創りたい理想の世界と同じく、完全無欠でなければならない。」
そう告げたとき、ニクスが何かを言おうと口を開きかけた――しかし。
その瞬間、ジュニオから放たれた異様なまでの圧迫感に、思わず言葉を飲み込む。
(なんて威圧感だ……近づいたら、本当に殺される……)
ニックスの心は、張り詰めた糸のように震えていた。
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