第53話 07 元素に選ばれし者
---
この時、フィードもまた、希望の光を見た。あいつを傷つけられた――この戦術は確かに効いている。俺たちの攻撃は、彼にダメージを与えることができるのだ。
エレメントは俯き、自らの傷ついた手をじっと見つめる。そして、にやりと笑った。
「ハハハハ……いいね、実にいい。君たち、本当に素晴らしい。何年ぶりだろう、俺が傷を負うなんて。連携も抜群だし、息もぴったりだ。」
彼の目が微かに興奮の色を帯びた。
「うーん、いけないな。ちょっとテンション上がっちゃったみたい。冷静でいなきゃならないのに。こんな感じじゃ、楽しくならないよ?つまらない戦いなんて御免だ。」
彼の表情が変わる。
「そうだな、今の俺にとって君たちは少し物足りない。だから――この2分以内に、手早く終わらせよう。そうしないと、面倒なことになる。」
そう語ると同時に、エレメントの全身を五彩の光が包み込んだ。まるで光の繭のように、彼の姿を覆い、やがて“殻”が砕けるようにそれは破れた。
彼の身体からは鮮烈な輝きが放たれ、瞳も虹のように色彩を帯びる。背後には五つの元素が渦を巻き、浮かび上がる。そしてその頭上には、まばゆい彩色の王冠が煌めいた。
「さて、状況は大きく変わった。だけど……あんまりワクワクしないな。やっぱり、君たちじゃ少し物足りないかも。よし、とりあえず前菜でもご馳走しようか。」
エレメントは両手をゆっくりと重ね、次の瞬間、彼の掌の間に虹のような光の帯が生まれた。それは螺旋を描きながら彼の周囲を漂い始める。
「悪いけど、俺、食事にはうるさいんだ。そんなもの、食べたくないね。」
フィードは冷たく、しかし確固たる口調でそう返した。
「じゃあ、君が避けられるかどうか、見せてもらおう。」
エレメントが手を放つと、虹の光は雷のような速さでフィードへと突き進んだ。村長はそれを見てすぐさま氷の魔法を発動し、虹を凍らせようとした。しかし――
氷が虹に触れた瞬間、それはまるで粉塵のように崩れ、溶けて消えた。
元素同士の結びつきを断つ“氷の魔法”でさえ、五つの属性が融合した攻撃には通用しなかった。
一瞬のうちに、虹はまるで泥鰌のように滑らかにフィードの目の前に現れた――。
---




