第53話 03 柔と剛の調和
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エレメントは天を仰ぎ見た。すると、空が突然暗くなり、まるで星々が堕ちるかのように、一撃の拳圧が隕石の如く轟然と降り注いできた。それはただの一発に過ぎなかったが、腕に纏う魔力が狂ったように渦巻き、膨張し、ねじれたことで、万軍が一斉に突撃してくるかのような圧力を放っていた——まるで数千、数万の拳が同時に襲いかかってくるように。空気さえ震えた。
危機を察したエレメントは、咄嗟に両腕を振り上げ、空中に神秘的な軌跡を描いた。瞬時にして水と雷の元素が召喚され、うねり咆哮する二体の竜へと姿を変える——青と銀。水の竜は波のように渦巻き、雷の竜は閃光となって空気を切り裂いた。口を大きく開き、轟雷と洪水が一気に放たれ、天地を揺るがす破壊の奔流となった!
轟音と共に、双方の力が空中で激突。爆発の衝撃が嵐の如く四方へと吹き荒れ、光と炎が天を包み込んだ。
だが、爆発の余波がまだ消えぬうちに、フィードの影が火の中から疾風のように飛び出した。その姿はまるで灼けた流星の如く、エレメントへと一直線に突き進んだ!
エレメントの表情が引き締まる。フィードは目前に迫り、拳の影は山のごとく重く、もはや避けようもない。
その瞬間、フィードの脳裏にふと浮かんだのは——「もしかして、俺の力は、彼より強いとは限らない」。
彼の記憶の中に、かつてのトーナメントで出会った相手が蘇った。小柄で背を丸めた老戦士。剛を柔で制し、静寂の中で猛撃を崩してみせたその姿。
その技を思い出す。力任せではなく、正面衝突でもなく、「順応し、力を受け流す」——柔の極意。
その瞬間、フィードの心から雑念が消え去り、意識が静かで柔らかな虚無へと沈んでいく。彼の身体は水の如く自然に構え、風圧が襲いかかるも、一片の動揺もなかった。まるで柔らかな寝台に横たわるように、温かく、しかし決して脆くはなかった。
エレメントの脚が鞭のように襲い来る。しかし、それはまるで雲の塊に触れたかのように、力を吸収され、巧みに方向を変えられてしまう。驚愕の表情を浮かべるエレメントは即座に脚を引き、次の攻撃へ——拳を振り下ろす!
フィードは馬歩を深く踏みしめ、大地に根を張るかのように動かない。彼は目を見開き、拳の軌道を正確に捉えつつ、真正面から受けず、巧みに引き寄せて方向を変えた!
襲い来る全ての一撃に対して、フィードはもはや真っ向から受け止めることなく、まるで魚が水中を泳ぐように、力を柔らかく流していく。まるで敵の攻撃と踊っているかのように。圧力をリズムに、暴力を旋律に変えて——
エレメントは戦いながら驚愕を深めていく。拳は加速しても、一発たりともフィードに届かない。「面白い。どこまで持つか見せてもらおうじゃないか!」
エレメントは魔法の力で地を歪め、フィードの体ごと大地へと引きずり込んだ!顔だけを地表に残して、彼を地中に封じる!
そして次の瞬間——怒涛の水流がフィードを襲い、溺れさせようとした!
だが、水がその身を包み込む寸前、フィードの体表から岩のような黄金の光が爆発的に膨れ上がった!激流を裂き、地殻さえ砕くその力!
「剛をもって柔に勝つ——柔は守り、剛は攻め。」
それが彼の悟りだった。
大地が崩れ、土石が舞い、フィードの姿が瓦礫の中から立ち上がる!黄金の光が彼の周囲に集まり、全てが右拳に凝縮されていく!
その拳は——天地を貫く隕石の如し。
「超重撃!」
ドォン——ッ!
雷鳴の如く鳴り響き、拳はエレメントを直撃。その衝撃は戦場全体を揺るがした!
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