第53話 02 覚醒せしフィード
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エレメントが笑い声を上げたその瞬間、何かがおかしいと気づいた。フィードの体を打ち抜いたはずの拳は、奇妙な金色の輝きに弾かれていた。「これは……何の防御だ?」と、エレメントが戸惑う間に、フィードの体がまるで蝶が繭を破るように変化していく。
元の身体は石像と化し、その中から本物のフィードが脱出したかのように現れる。彼の全身は大地のような黄土色の金光に包まれ、頭上には岩石でできた王冠が輝いていた。それは、“王のモード”が発動された証。
フィードは両腕を広げ、身体をかすめる風を感じる。今の彼には、全能の力が宿っているかのようだった。体内からは魔力が怒涛のようにあふれ出し、今にも爆発しそうな勢いを放っている。
「速度も力も、さっきとはまるで別物……これが、“王のモード”か。」フィードは静かに感嘆の言葉を漏らした。
その姿を見たエレメントは、気を失って倒れているニクスを一瞥もせず、フィードを見据える。「まさか今日、王が二人も見られるとはな……最高だ。さあ、殺し合おうじゃないか!」
フィードは一言も発することなく、瞬間移動でエレメントの目の前へと現れた。そして彼の腹部を狙い、足を振り上げようとしたが、膝をエレメントの手でがっちりと押さえ込まれてしまう。
「なるほど、速度は確かに速くなったな……だが、力はまだ大したことないようだ。」
そう思った次の瞬間、エレメントの考えは覆された。
「……誰が全力だと言った?」
フィードの口元がわずかに歪むと、拘束されていなかった左足が地面を激しく蹴り抜いた。床は音を立てて崩れ、大きな穴が開き、二人の身体はそのまま落下していった。
エレメントは落下の勢いを利用してフィードをさらに深い闇の底へと突き飛ばす。そしてその反動を利用し、自らは安全圏へと跳び退いた。
だが、フィードは空中で囚われることなく、まるで空気の上を歩くかのように、塵ほどの粒子を足場にして、空中を駆け上がっていく。
「こいつ……空気の上を歩いている? いや、違う。空中の微細な塵を踏んでいるんだ。なんという筋肉制御力だ……!」
そうして、フィードはエレメントの真上に躍り出た。
「来るな……この一撃の衝撃を、感じ取れる……!」
フィードの声は低く、地の底から響くように唸った。
「星を砕け!」
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