第8話06冒険が始まろうとしています
交錯する運命
ニックスは真剣な眼差しでフィードを見つめながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「そうか……君は一人でこの世界に来たんだな。」
フィードは静かに頷く。その表情には、どこか寂しさが滲んでいた。
「つまり……シャーも、エリーサも、カスも一緒じゃないってことか?」
「そうなんだ。」
フィードの声は落ち着いていたが、その奥には不安が隠れていた。
「君の話を聞く限り、どうやら僕たちがこの世界に来た時間はバラバラみたいだ。彼らがいつ来るのか……あるいは、すでにどこかにいるのか……まったく分からない。」
ニックスは腕を組みながら、考え込むように天井を仰ぎ見た。
「それは厄介だな。でも、心配しすぎるのはよそう。昔から言うだろ?‘車到山前必有路’(問題があっても、解決策は必ず見つかる)。」
彼の言葉に、フィードはふっと力を抜き、苦笑した。
「君のその楽天的なところ、本当に羨ましいよ。」
ニックスは肩をすくめ、ニヤリと笑う。
「何とかなるって信じてれば、案外何とかなるものさ。」
すると、フィードは突然、大声で笑い出した。
「ははは! 本当に懐かしいな、この感じ!」
彼はテーブルを軽く叩きながら、目を輝かせてニックスを見た。
「今日は本当に嬉しいよ。この広い世界で、またニックスに会えるなんてな。こんな奇跡を祝って……カードゲームでもしよう!」
「いいね!」
ニックスはにやりと笑い、フィードの提案を即座に受け入れた。
「仕事は明日からでいいさ。今日は久々に羽を伸ばそう。」
再び共に
カードを手に取ったフィードは、ふとニックスの顔を見つめた。
「ところで、ニックス。」
「ん?」
「君はこれからどこへ行くんだ?」
ニックスはしばらく考え込み、それからまっすぐフィードを見つめた。
「王都へ向かうつもりだ。でも、一人で行くのは心細い。」
フィードは興味深そうに眉を上げた。
「つまり?」
ニックスは笑みを浮かべながら、手札を切ると同時に言った。
「一緒に行く気はあるか?」
フィードはしばらく沈黙し、それから少年のような無邪気な笑みを浮かべた。
「もちろんだよ。君は僕の親友だからな。」
二人は顔を見合わせ、大きく笑った。
「今日は本当にいい日だった。」
ニックスは心からそう思った。
新たな旅立ち
その夜、ニックスは久しぶりにぐっすりと眠ることができた。
翌朝、眩しい朝日が窓から差し込み、部屋を柔らかな光で満たしていた。
フィードはすでに起きていたようで、ニックスのために宿を手配してくれていた。
身支度を整えながら、ニックスは改めて拳を握りしめる。
「さて、今日は正しいことをしよう。」
窓の外に広がる街並みを眺めながら、彼は静かに決意を固めた。
「王都へ向かうための仲間を見つけるぞ!」




