第52話 17 星明かりに誓う夜
先ほどシャーの熔岩攻撃を防ぎ切ったばかりのエレメントは、息を整える間もなく、稲妻のような速さで迫りくるフィードに目を向けた。
その瞳にわずかな侮蔑がきらめき、身を翻して容易く回避すると、鋼の鉤爪のような五指でフィードの頭部をがっちりと掴む。
「お前の技……そっくりそのまま返してやろう。」
言葉と同時に、両腕に溢れんばかりの膂力を込め、役立たずの塊のようにフィードを大地ごと引き剥がすように投げ飛ばした。
空気が悲鳴のような衝撃波を放ち、フィードの身体は流星のごとく暗い森の奥深くへと叩き込まれ、夥しい木片と土煙が空へと舞い上がった。
エレメントはゆっくりと首をめぐらし、ニックスにその鋭い視線を向ける。
五色の光が流転する瞳に、異様な興味の色が宿る。「この状態……実に興味深いな。己の肉体の半ばを、内に潜む魔物に明け渡す者など、これまで見たことがない。それに、お前の手にあるのは……精霊剣だな。肉体、精霊剣、そして魔物――三位一体を成しているとは。」
ニックスの胸中に焦りが走る。――時間を稼げ。あと少しで、援軍が到着する。
深く息を整え、わずかに言葉を絞り出す。「……なぜ星を狙う? 彼女の居場所をどうやって突き止めた?」
エレメントの唇が不快な嘲笑に歪む。「魔法石で居所を特定するのは、容易いことだ。お前は知らないのか? あの少女が“実験体”であることを……いや、どうして実験体にされたのかは知らぬのだろう?」
その声は低く、そして耳障りな悦楽を含んでいた。「あの娘は魔法石を埋め込まれた。その身体は魔法石の力を“完全な安全エネルギー”へと変換し、人間をリスクなく第三段階へと到達させる鍵なのだ。それこそが、彼女の唯一にして最大の価値――ゆえに彼女は、耐性を高めるための非道な実験を繰り返し受けてきた。おぞましいだろう? これが、この腐敗した世界に“創世”が必要な理由だ。ゆえに、我々にはあの少女が必要なのだ。」
その言葉を耳にした瞬間、ニックスの顔に影が差し、胸奥で怒りが熔岩のごとく煮え滾った。
「……お前は彼女が何を経験してきたか知っているのか? 彼女はまだ多くの物の名前すら知らない……いったい何の罪がある? 何をしたというんだ、これほどまでの仕打ちを受けるほどの!」
声は戦場に反響し、痛みと激昂が交じり合う。「彼女はただの優しい少女だ。おそらく小学校すらろくに終えていない年齢で、これほどの運命を背負わされている……お前たちも、あの実験を行った連中も、誰一人として人間を道具扱いする資格はない!」
精霊剣を握る手に力が籠もり、その刃先は幽光を帯びながら、一直線にエレメントを指し示す。
「……必ず彼女を守り抜く。俺は――彼女にとって最後で、最強の切り札だ!」
幽霊のごとき低い声と、ニックスの激しい咆哮が重なり合う。
「――てめえは絶対にぶっ殺したぞ!」




