第52話 16 私は名前はエレメント
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「……私は名前はエレメント。」
月光と煙塵が入り混じる戦場に、男の声が雷鳴のように響き渡った。
「ニックス!」「フィード!」「シャー!」三人が力強く名乗りを上げ、その声には揺るぎない決意が宿っていた。
「始めよう……まずは一番の強者から消し去ってやる!」
エレメントの瞳孔に五色の光が迸り、その身は裂けた稲妻のように一瞬でニックスに迫る。
低く身を伏せた掃撃が、空気を切り裂く恐ろしい音と共に襲いかかる。
ニックスは戦闘本能で間一髪身を屈めて回避したが、呼吸を整える間もなく、エレメントのもう一方の足が大地を踏み砕いた。
呼応するように、大地が目覚めた巨獣のように震え、轟音とともに無数の太い蔦が地面を破り、ニックスの幽霊鎧を絡め取る。
「……空間魔法が付与されている……幽霊化が使えない!」
ニックスの目が鋭く光り、その思考が閃くや否や、絡みついた蔦から白熱の雷撃が迸り、狂暴な雷蛇のように鎧の隙間を駆け抜け、全身の神経を焼き尽くす。
その瞬間、シャーの操る灼熱のマグマが溢れ出し、溶岩の奔流が絡みついた蔦を一瞬にして焼き切った。
エレメントが横目で見ると、大地が見えない力に押し上げられ、燃え盛る溶岩の城塞が轟然と隆起する。
その頂に立つシャーは両腕を交差させ、城塞の巨大なマグマ砲を制御する。真紅の光が砲口の奥に収束し、重々しい轟音と共に撃ち放たれた。
エレメントは一片の迷いもなく、掌に大地の力を凝縮し、鉄壁の土の障壁を形成する。
熔岩の奔流を受け止めると同時に、反撃が閃光のように放たれる——無数の微細な土粒が、死を告げる砂嵐のごとく、高温により一瞬で熔解し、潜ませた水の魔力と融合して罠と化す。
城塞の高みに立つシャーは次の一撃を思案していたが、その足元に不穏な気配が集まり始めていることに気づく。
「……しまった!」
シャーが顔をしかめる間もなく、マグマの城塞が内側から爆裂した。
熔岩の中から咆哮と共に躍り出たのは、龍のごとき巨大な水流——その鱗は深紅の炎の障壁に包まれ、荒れ狂う水と土の二重魔法が編み込まれていた。
水龍は城塞の壁を粉砕し、破片の間を縦横無尽に暴れ回ると、シャーに食らいつき、そのまま灼熱の溶岩へと巻き込んだ。
煮えたぎる熔岩の中、シャーは驚愕に目を見開く。「……溶岩の中でも、全く損傷を受けていない?!三重魔法……!くそっ、気づかなかった!」
瞳孔が鋭く収縮し、怒号と共に体内から無数の鎖が毒蛇のように飛び出し、水龍の胴を絡め取る。
烈火が二者を包み、熔岩の底で翻りながらの死闘が繰り広げられる。
爆ぜる気泡音と鎖が軋む金属音が交錯し、まるで地獄の深淵で奏でられる死と生の交響曲のように響き渡った。
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