第52話 14 超越した天才、五属性魔法の使い手
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攻撃の余波は雷鳴のように轟音を立て、ニックスたち三人をまとめて吹き飛ばした。黒いフードの男の身体も強烈な衝撃に持ち上げられたが、彼はなおも両足で大地をしっかりと踏みしめ、常識を超えた不気味な姿勢のまま後方へと滑るように移動していく。靴底と硬い地面の激しい摩擦が耳障りな音を響かせ、濃密な砂塵が夜空に立ち込める。やがて、両足がひび割れた大地に深く食い込んだところで、その身は完全に停止し、大きく反り返っていた腰をゆっくりと伸ばし、まるで目覚めた獣が体を解き放つかのようだった。
月光が皎々と降り注ぎ、破れたマントが彼の真の顔を露わにする――鋭い刃のように冷酷な顔立ち、剣そのもののような眼差しには確固たる意志と灼熱の光が宿り、墨で描かれたような濃い眉、高くまっすぐな鼻梁が恐ろしくも美しい立体感を際立たせる。青い髪が風に揺れ、その深く鮮やかな翠緑の瞳を一層引き立て、彼の全身からは夜に潜む王者の虎のごとき威圧感が、一呼吸ごとに自然と放たれていた。
ボロボロになった服の下、開いたジャケットからは、彫刻のように鍛え上げられた筋肉が露わになっている。
「まさか……俺たち三人の全力の一撃が、まったく効いていないだと?!」フィードが目を見開き、驚愕に満ちた声をあげた。
シャーは眉間にしわを寄せ、低くつぶやく。「いや……あれは肉体で耐えたわけじゃない。私のエネルギー衝撃波が命中したとき、確かに感じた……力は彼の身体に触れる前に隔絶され、拡散された。……魔法防御も使っていなかったはず。どうやって防いだの?」
「見事な一撃だ。いや、正確には三撃と言うべきか。」男はゆっくりと両腕を広げ、冷ややかな威圧感と共に愉悦の色を帯びた声で語る。「時を操る者、鎧を纏う者、そしてお前、格闘家……見事な連携だった。防御も、時機の見極めも、全て感じ取れた。だが――なぜ私がそれを防げたのか、まだ分からないのか?」
ニックスはその身を凝視し、淡い光の中でついに気づく。彼の鍛え抜かれた肉体を、五色に輝く光が血流のように脈打ち、奔流しているのだ。
「見えたか? 通常、人が扱える属性は一つ、多くても二つだ。天賦の才を持つ魔法使いでも、三つを同時に操り融合できる者は、世界の頂点に立つほどの存在だ。それこそ奇跡と呼ばれ、畏敬の眼差しを集める……だが、私は違う。」
ニックスの胸中に、言葉にするのも恐ろしい予感が閃いた。「まさか……あり得ない、お前、まさか……!」
男は顔を上げ、傲然と哄笑した。「そうだ、私は五つの属性を同時に操る――天才をも凌駕する、究極の天才だ!」
次の瞬間、彼の両拳が激しくぶつかり合い、五色の魔力が空気を切り裂く悲鳴をあげた。五大元素が渾然と絡み合い、轟き、怒涛のような威圧感が全方位に押し寄せる。 「さて……少しだけ、本気を出そうか。」
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