第52話 11 再びの創世
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「……そうか、理解した。」
黒いマントの男の低い声が、冷ややかな刃のように空気を切り裂いた。次の瞬間、その姿は引き伸ばされた黒い稲妻のごとく、凄まじい速度でニックスに迫る。
ニックスは即座に悟った。視線が追いつかないほどの速度、さらに魔法杖すら使わず魔法を操る圧倒的な実力――これほどの相手に勝利するのは、極めて困難だ。
――狙いは、俺か。
脳裏で戦術が閃光のように駆け巡る。幽霊化で攻撃をかわし、その瞬間に奴の身体を貫く……完璧な反撃が成立するはずだ。 どれほど外殻が鍛えられていようとも、内部まで鍛えることは不可能だ。
だが、もしこの男がかつて対峙したあの巨竜並みに強靭であれば――危うい。
攻撃が迫る。周囲の空気が圧縮され、耳鳴りのような沈黙が辺りを満たした。ニックスは回避せず、頭の中で計画を反芻する。
――今だ!
次の瞬間、腹部に鋭い痛みが炸裂した。
黒マントの拳が、正確無比にニックスの腹を貫いていた。
「……あり得ない!」ニックスの瞳が見開かれ、驚愕に染まる。どうして……幽霊化の俺に当たる!?
問い終える間もなく、男の掌から噴き出した灼熱の炎がニックスの胸を貫き、轟音と共に彼を吹き飛ばした。焼けつく衝撃に包まれ、意識が暗転していく。
マントの男は冷笑し、軽蔑を滲ませた声で呟く。
「幽霊化の能力?所詮は低級の技にすぎん。空間魔法で拳を覆えば、その虚ろな形態など容易く砕ける。今まで気づかなかったのは、ただ貴様の相手が弱すぎただけだ。」
その声が次第に高まり、革命の号砲のように空間を震わせる。
「我らは“創世”!
腐りきった旧世界を滅ぼし、新たな時代をもたらす者――
清浄なる世界を創るため、力こそが絶対に必要なのだ!
覚えておけ、我こそは格闘魔導士、五大元素の支配者だ!」
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