第52話 09 流星のように砕け散る
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三日間にわたる過酷な訓練を経て、ニックスはようやく新たな技の感覚を掴みつつあった。ただ一つの問題は――その一撃が、時折どうしても標的を外してしまうことだった。それでも、この数日間は仲間たちと共に、賑やかで煌びやかな周年祭を心ゆくまで楽しんでいた。
祭りの最終日、五人は夜空を横切るかもしれない流星を見に行くと約束した。
「お姉ちゃん、そろそろ出発しよう。」
シャーが柔らかく声をかける。
「無理……もう限界……」エリーサはふかふかの枕に頬を埋め、心地よい温もりに包まれた布団に体を沈めながら、誘惑に抗えない声で呟いた。「ベッドの魅力が……強すぎる……まるで私を呼んでいるみたい……」
その様子にシャーは小さくため息をつき、ニックスの方へと顔を向けた。「諦めましょう、お姉ちゃんはもうダメです。このままここで野生に返しましょう。」
「仕方ないな、それじゃあ俺たちだけで行こう。」フィードが肩をすくめる。
「よし、それじゃあ出発だ。」ニックスも苦笑しながら頷いた。
四人は夜風に吹かれながら、草木の香りが漂う道を進む。
「ねえ、ニックス。流れ星って何?」シィが小首を傾げて尋ねる。
ニックスは一瞬言葉に詰まり、考え込んだ末に答えた。「厳密に言うと……流れ星は、空を横切る巨大な石だよ。うん、たぶんそんなところだ。」
「でも、どうして通り過ぎるときにあんなに綺麗な軌跡が残るの?」シィの瞳が好奇心にきらめく。
その問いにニックスは再び沈思し、すぐには答えられなかった。
「ニックス、勉強ちゃんとしてなかったみたいね?これはダメよ。」シャーが悪戯っぽく口元に笑みを浮かべる。
「うわっ、本当に悪かったな!僕が学のない人間で何が悪い!」ニックスが声を荒げ、皆の笑い声が夜道に弾けた。
やがて彼らはリードおすすめの観賞スポットに辿り着いた。
「この場所、いいな。やっぱり人っ子一人いないな。」ニックスはあたりを見回し、「でも、リードはもう少し時間がかかりそうだな。」
「僕、流れ星を見るのは初めてだな。」フィードが夜空を仰ぎ、幼い憧れが宿る瞳をきらめかせる。
「嘘だろ?一度見たことあるじゃないか。覚えてない?小学生の頃、真夜中に抜け出して、頭上に流れる美しい流星を見たんだ。」ニックスが笑顔で言った。
「ああ……そういえば、そんなこともあったね。」フィードが遠い記憶をたどるように目を細め、「今は病気も治って、以前より魔力神経もずっと安定してるよ。」
四人が腰を下ろそうとしたその瞬間、ニックスの表情が一変した。
彼はシィを咄嗟に横へ突き飛ばし、次の瞬間、空気を裂くような鋭い一撃が走り、ニックスの体を深い森の闇の中へと吹き飛ばした。
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