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第8話05久しぶりの会話

再会と語らい


フィードがゆっくりと口を開いた。


「ニックス……君は昔から正義感が強い奴だと思っていたけど、まさか他人を殴るようになったとはな。」


彼の視線が倒れた強盗たちへと向かう。その瞳にはわずかな疑問が浮かんでいた。


ニックスは肩をすくめ、冷静に答える。


「こいつらはただの通りすがりの市民じゃないよ。さっき僕を騙して金を奪おうとした強盗だ。だから、正当防衛として彼らを気絶させただけさ。」


フィードは一瞬考え込むように目を細めたが、すぐに表情を緩めて頷いた。


「そうか……それなら納得だ。君の言うことを信じるよ。」


「ずいぶんあっさり信じるんだな。」ニックスは半ば冗談めかして言う。


「君の言葉を疑う理由がないからね。」


フィードは穏やかに微笑んだ。その笑顔は昔と何一つ変わっていなかった。


ニックスはその様子を見て、懐かしさと安心感に包まれた。


「久しぶりに会ったけど、君は全然変わってないな。」


「君もだよ。」


フィードはそう返したが、その瞳には何か深い思索の影が揺れていた。


「……いや、むしろ僕は色々と変わったかもしれない。」


そう言うと、フィードは少し遠くを見るような表情になった。


ニックスは彼の言葉の裏にある何かを感じ取ったが、今は深く追及しないことにした。


「君の話を聞かせてくれよ。」


フィードは微笑みながら言った。「ニックスがこの世界でどんな旅をしてきたのか、僕も知りたい。」


「分かった。でも僕の話が終わったら、君の話も聞かせてくれよ。きっと面白い話があるんだろ?」


ニックスはそう言いながら歩き出す。


「僕の話は長いからね。まず、この世界に来た時から話そうか……。」


——その時、かすれた声が背後から響いた。


「た、助けてくれ……。」


倒れていた強盗の一人が、震える手を伸ばして弱々しく呟いた。


しかし、ニックスとフィードは特に気に留めることもなく、そのまま歩き続けた。


冒険者ギルドへ


二人は並んで歩きながら、ニックスの冒険の話を続けた。


「それでさ、その火焰精霊が突然暴れ出して——」


ニックスが熱く語ると、フィードは目を輝かせて頷く。


「それはすごいな! 火焰精霊との戦い、めちゃくちゃ燃える展開じゃないか!」


彼はまるで物語の続きを待ち望む子供のように身を乗り出した。


「まぁ、面白いことばかりじゃなかったけどな。」


ニックスはふと目を伏せ、苦い笑みを浮かべる。


「楽しいこともあれば、悲しいこともあった。旅ってのは、そういうものなんだよ。」


その言葉に、フィードは静かに頷いた。


気づけば二人は、巨大な石造りの建物の前に立っていた。


冒険者ギルド——旅人や戦士たちが集う場所。


扉をくぐると、中には様々な種族の冒険者が賑やかに談笑し、酒を酌み交わし、クエストの依頼を確認していた。


「さすがギルド、活気があるな。」


ニックスが感嘆していると、フィードがふと思い出したように言った。


「ところで、僕の話は聞きたくないのか?」


「ああ、そうだったな。」


ニックスは興味津々といった表情で身を乗り出す。


「君の話も聞かせてくれよ、フィード。君がこの世界で何をしていたのか、すごく気になる。」


フィードは軽く笑い、静かに言った。


「僕の話は短いよ。僕はおよそ二週間前にこの世界に来たんだ。」


「……え?」


ニックスの表情が一瞬で驚愕に染まる。


「待てよ。僕たちって、同じ時期にこの世界に来たんじゃなかったのか?」


動揺を隠せないニックスを前に、フィードの微笑みがわずかに陰る。


「そう思ってたんだけどね……どうやら、そうじゃなかったみたいだ。」


——この世界の時間は、二人にとって同じように流れていたのか?




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