第52話 07 もう一度修行だ
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「まずは、自分の魔力を剣にゆっくりと流し込むんだ。まるで剣が呼吸するかのように……これは簡単だろう?」
リードの声は低く、落ち着き払っていて、長年の経験に裏打ちされた重みがあった。
ニックスは深く息を吸い込み、右手で剣の柄をしっかりと握る。刃から伝わる微かな震動を感じ取り、細い糸のような魔力が、冷たい金属の内部へと静かに染み渡っていくのを意識する。
「こんな感じか?」
「うん、上出来だ。さて、次は?」
「次はな、力強く剣を振り抜き、剣上を駆ける魔力の揺らぎを感じ取れ。その瞬間、魔力が一瞬だけ剣身から離れたような感覚があるだろう?」
ニックスはもう一度試し、その刹那、確かに魔力が剣から離れ、空気の中でわずかに震えるのを感じ取った。
「そうだ! まさにその感覚だ!」リードの目がわずかに輝き、さらに説明を続ける。
「ここからが言葉では説明しにくい部分だ。魔力が剣を離れかけた、その一瞬に、新たな魔力を一気に注ぎ込むんだ。まるで長い間封じ込められていた炭酸飲料の蓋を開けるように――『パンッ!』と勢いよく魔力を解き放てば、剣から完全に飛び出し、鋭い剣気として放たれる。その威力や範囲は……お前の魔力量次第だ。さあ、やってみろ!」
ニックスは全神経を集中させ、足を踏ん張り、全身の筋肉を緊張させて剣を振り抜いた。しかし、何度繰り返しても、剣気は現れず、空気を切り裂くだけだった。
「これは……想像以上に難しいな。」ニックスは軽くため息をつき、眉を寄せる。「魔力の調整があまりにも繊細だ。俺は元々、魔力の調和が得意ってわけじゃないんだ。」
「そんなはずはない。」リードは首をかしげ、疑問の眼差しを向ける。「魔力調和の理屈はわかっているだろう? お前は体内の魔物の力を、何の支障もなく引き出せている。それは、魔力のコントロールが正確である証拠だ。魔物が自分からお前を助けるはずがないんだからな。」
ニックスはその言葉に、意味深な笑みを浮かべた。
「いや、それはどうだろうな。」彼は静かに答える。「あれは魔物なんかじゃない――俺の……友であり、仲間なんだ。」
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