第52話 02 見学時間:明日
「今日は村の周年祭らしいわよ。行ってみない?」
シャーが穏やかに口を挟む。
「シャー、頼むから少しは助けてくれよ。この二人、完全に食べ物と金に脳をやられてる。」
「うん、大きな富の前では人は簡単に自分を見失うもの。だからこそ、この欲望をきちんと制御しなければならない。」
シャーはいつも通り冷静にまとめた。
「……やっぱりお前だけがこの中で唯一まともな人間だな、そうだろ?」
ニックスは肩を落とし、渋々うなずいた。
「昨日の君の助言で、しばらくは自分で事業を起こすのはやめることにしたんだ。」
シャーは続けた。「でも、この世界で成功するためには他人の事業を信じるしかない……ニクス、株を始めよう!」
「はあっ!? 異世界に株なんてあるわけないだろ!!」
「ニックス! この新しい服、ぜひ試してみてよ! 私のファッションレベル、Level Upしてるんだから!」
エリーサが言葉を重ねる。
「ニックス! 私の新作料理も味見して! 私の愛情と情熱をすべて注ぎ込んだ一品なんだから、絶対感動するはず!」
「ニックス! 株を始めようよ! 一緒にこの世界で大富豪になれるって!」
「お願いだから、誰か助けてくれーー!!!」
ついにニックスは限界に達し、頭を抱えて叫んだ。
ひとしきりの騒ぎのあと、ようやく場が落ち着きを取り戻した。
「周年祭って、一体どんな催しがあるんだろう? もしかして美味しいものも出るのかな?」
フィードが期待に胸を躍らせる。
「さあ……でも昨日の情報だと、一本の古い大樹に、とても珍しい花が満開らしいわ。」
エリーサがわずかに弾んだ声で答える。
「夜、少し疲れてるみたいだね。」
「自分でもわからない……最近、あの幽霊がいつもそばにいて、放っておいてくれないんだ。このままだと、本当にクマができそうだ。」
ニックスは苦笑した。
五人は計画通りその場所に向かったが、そこには誰の姿もなかった。
風に揺れる一枚の木製の札だけが目に入り、そこにはこう書かれていた。
――『見学時間:明日』
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