第51話 最終章「私は、夜空に散りばめられた無数の星々すべてを合わせても、あなたへの愛には敵わない」
「どうしてそんなに悲しそうな顔をしているんだ? この日が来ることは……君もずっと前からわかっていたはずだろう。」
ホウ・ペイは、どこか冗談めかしつつも、疲れがにじむ声でそう言った。二人は今、古びた木造の小屋の中にいた。窓の外から差し込む夕陽が、年季の入った木枠を透かし、斑に金色の光を室内に散らしている。ホウ・ペイは静かに木のベッドに横たわり、薄い笑みを浮かべていた。
「正直に言えば、ここまで生きられたのは随分と長生きした方だよ。あの黒心の魔女に搾り取られながらも、九十を過ぎてもこうして生きていられたんだから、これも天の恵みってやつだな。」
そう言って、彼は小さく息を吐き、安堵のような微笑みを口元に浮かべた。
夢子は俯き、涙がぽたぽたと二人の固く握り合った手の甲に落ちる。悲しみで震える声で絞り出した。
「わかってた……わかってたけど、それでも受け入れられないの。どうして……どうして去るのが私じゃないの? どうして私だけが生き続けなきゃいけないの? そんなの……また一人ぼっちになっちゃうじゃない……お願い……お願いだから、私を一人にしないで……もう、独りはいや……」
彼女の指はホウ・ペイの手を必死に掴み、まるで一度でも緩めれば、彼が風に溶けるように消えてしまうかのようだった。
「……ごめんな。」ホウ・ペイの声は、冬の終わりに残る最後の一筋の光のように、柔らかく掠れていた。「どうやらこの先の道を、君と一緒に歩き続けることはもうできないみたいだ。でも、君は本当の意味で独りにはならない。僕はずっと君の記憶の中に、そして君の心の中に……永遠に生き続けるから。」
「でも……」夢子の声は、深い絶望を帯びて震える。「いつか……私は忘れてしまうわ……あなたの顔がだんだんと思い出せなくなっていく……その時、私はどうすればいいの……?」
ホウ・ペイは、泣きじゃくる子供をあやすように柔らかく微笑んだ。
「その時は、新しい仲間や友人に出会うさ。だって君は……こんなにも愛らしいんだから。少し不器用で、時々ドジだけど、そこが一番君らしい。僕は後悔したことは一度もない。君と出会った、あの瞬間から……ずっとね。さあ、もう俯かないで。最後に、僕を見てくれ。」
夢子は震えるまま顔を上げ、かつて何度も見つめた、けれど今や輪郭すら曖昧になりかけている顔を見た。白髪が混じり始めた柔らかな栗色の髪、かつての輝きは薄れながらも優しい温もりを放つ青い瞳、老いたがなお温和な表情。夕暮れの黄金の光が聖光のように彼を包み、空気中の微細な塵が光を受けてきらめき、まるで星屑のようにこの最後の光景を彩っていた。
「夢子……愛しているよ。永遠に。天のすべての星々の輝きを集めても、僕の君への愛には敵わない。この、君にとっては短いかもしれない時間が、どうか君の記憶に残り、僕を――死ぬまで君を愛し続けたこの僕を、永遠に覚えていてくれたら……それでいい。これが、ホウ・ペイという人間の一生なんだ。」
ホウ・ペイの口元に、解き放たれたような、そして限りなく優しい微笑みが広がった。
夢子はもう声にならず、彼を抱きしめ、嗚咽まじりに答えた。
「私も……ずっと、永遠にあなたを愛してる……」




