第51話 16 二人で描く明日
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ホウ・ペイの全身が、眩い魔力の輝きに包まれ、戦局を一変させる「ケーキ魔法」をさらに繰り出した。瞬く間に、敵軍の鎧や武器が空気中で重厚で甘い香りを放つケーキへと変貌する。兵士たちは、突然空っぽになった自分の手を呆然と見つめ、恐怖と絶望の入り混じった叫びを上げた。
「こ、こんな魔法……あまりにも厄介だ!装備が全部なくなったら、いくら強くても戦えない!隊長、今は退却すべきです!」
「退く必要はない!」指揮官は歯を食いしばり、拳を握りしめた。「少しの間持ちこたえればいい!後方の魔法部隊が“切り札”の準備をしている。耐えきれば勝利は我らのものだ!」
その瞬間、背後から軽やかで挑発的な声が響いた。
「その“魔法部隊”なら……ごめんね、君たちがこのバカと必死に戦っている間に、私が全部片づけちゃったよ。」
モウコが静かに姿を現した。指先にはまだ魔力の余韻が漂い、その華奢な体が戦場の煙に溶け込み、幻のように揺らめく。「彼ら、集中しすぎて私がそばにいることに全然気づかなかったんだ。簡単だったよ。……そろそろ私たちも退いた方がいいかな。これ以上引き延ばしても、私たち二人にはメリットがないし。」
ホウ・ペイは頷き、口元に軽やかな笑みを浮かべた。「よし、それじゃあ……華麗に退場といこうか。」
彼はためらいもなくモウコを横抱きにした。モウコの顔が一瞬で赤く染まり、声が裏返る。「な、なにしてるのよ、このバカ!」
「もちろん——俺たちの“華麗なエンディング”さ。」ホウ・ペイは愉快そうに答えた。
その瞬間、巨大な苺のショートケーキが空から降り注ぎ、二人をまるごと包み込んだ。ふわりとした生地と甘いクリームが一瞬で爆ぜ、煙と甘い香りが弾けた次の瞬間、二人の姿は戦場から掻き消えていた。
気がつけば、ホウ・ペイはモウコを抱いたまま、戦場から遠く離れた静かな森の中に立っていた。木漏れ日が二人の肩を優しく撫で、互いの呼吸と心音が重なる。モウコはホウ・ペイを見上げ、唇の端にかすかな笑みを浮かべた。「……思ったより、ずっと強いのね。どうして急にそんなに強くなったの?その武器、一体何?」
ホウ・ペイは腰に吊るされた古びた革の巻物にそっと指先を向けた。巻物の表面には複雑な魔法陣が刻まれ、中には古の力が封じられているようだ。「これは俺の魔力を何倍にも高めることができる。心に思い浮かべるだけで、どんなものでも一瞬でケーキに変えられるんだ。待ち時間も必要ない。……どうだ、すごいだろ?」彼は得意げに微笑んだ。
モウコは小さく呟いた。「……ありがとう、助けに来てくれて。それで、これから私たちはどこで暮らすの?」
「さあな。」ホウ・ペイは空を見上げ、陽光を反射する瞳に笑みを浮かべた。「小さな町でも、野外でも、どこでもいい。お前と一緒なら、毎日美味しいケーキを作ってやれる。……どうする?“ケーキ執事”付きの生活、続けてもいいか?」
モウコの頬がみるみる朱に染まり、視線を逸らしながらも小さな声で答える。「……だったら、ちゃんと最後まで一緒にいてよね。」
「もちろんだ。」ホウ・ペイは優しく笑い、しっかりとモウコを抱き直した。真夏の陽光が二人の影を長く伸ばし、それはまるで、これから始まる新しい旅路を導くように寄り添い続けていた。
こうして、二人は共に、甘く自由な新たな日々へと歩き出した。
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