第51話 17 ケーキの味の約束
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「こういう言葉があるだろう——英雄は、いつだって最後に登場するものさ。」
ホウ・ペイは手を差し伸べ、倒れ込んでいた夢子をそっと引き起こした。掌から伝わる体温が、彼女の胸のざわめきまでも静めていく。
「時間稼ぎ、本当にお疲れさま。」柔らかな声に自信の笑みを浮かべ、「あとは僕に任せてくれ。」
夢子は唇を噛みしめ、不安の色を瞳に宿す。「でも……ケーキだけで、本当に彼らを止められるの? あの人たちの力はあまりにも強すぎる。このままじゃ——」
ホウ・ペイはそっと彼女の頭に手を置き、春風のように優しく撫でた。「大丈夫だよ。僕は言っただろ、必ず君をここから連れ出すって。その後は……誰にも邪魔されない場所を見つけて、好きなことをして生きよう。」
言葉が終わるより早く、騎兵たちは厚いケーキの壁を突破し、長槍を突き出してホウ・ペイに迫る。
彼は岩のように揺るがず、一歩も退かずに振り返り、夢子に自信に満ちた笑顔を見せた。「今の僕は絶対に負けない。そこで見ていて、僕が勝つ瞬間を——きっと、すごくカッコいいから!」
両の掌を合わせ、指先からまばゆい光が溢れる。「ケーキ魔法・探索!」
瞬く間に、突進する騎兵たちの鎧と武器が無形の渦に呑まれたように、空気中から跡形もなく消え去る。ホウ・ペイが低く呟いた。「生成!」
吸い上げられた武器と鎧が巨大な生地に融合し、回転し、膨張し、嵐の雲のごとく渦を巻く。
「最終段階——成形!」
分裂した生地が空高く舞い上がり、幾重にも重なる鋼鉄のケーキへと凝固し、天空から轟音と共に降り注いだ。
層の間には騎兵たちの長槍が煌めき、外側の糖衣は兵士たちの勲章から成り、圧倒的な質量で敵軍を粉砕した。
だが、これはまだ序幕にすぎない。
ホウ・ペイの足元の大地と周囲の樹木さえも魔法に呑み込まれ、次々と莫大な魔力を宿した「ケーキ」へと変貌し、砲弾のように放たれる。その一撃ごとに轟音が響き渡り、森全体が震撼する。
圧倒的だったはずの軍勢が、一瞬にして劣勢へと転じた——さっきまでの優位は、もはや跡形もない。
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