第51話 09 あなたがいてくれたからこそ、生まれた時の流れ
「……私たち、きっとどちらも孤独だった。でも、だからこそ約束しようよ。“もう二度と孤独にならない”って。ずっと一緒にいよう、未来を笑って迎えに行こう。」
夢子はその言葉を聞いた瞬間、透き通るような瞳から涙が溢れ出し、白く儚い頬を静かに伝い落ちた。まるでその一言が、長い間閉ざされていた彼女の心の扉を、そっと叩いたかのようだった。
「……本当に、いいの?」彼女はかすかな声で尋ねた。声はわずかに震え、不安と願いが入り混じった響きを帯びていた。「あなた……本当にずっと、私のそばにいてくれるの?」
潤んだ瞳がそっと相手を見上げる。その視線は、未来からの確かな約束を求めているようだった。
「きっとこれから、長くて辛い日々が続くわ。まるで追われるように、逃げて隠れて……流浪の民みたいに。夜の闇で傷ついて、もう立ち上がれない時だってあるかもしれない。あなたも言ってたよね、正直、疲れてるって……私のために無理してほしくないの。」
夢子の声は風に溶けるように小さくなりながらも、抑えきれない想いがひとつひとつ言葉になって紡がれていく。
「……そんな明日でも、あなたは一緒に歩んでくれるの?」
彼は一歩、そしてまた一歩と優しく近づいてきた。その声は春の午後の陽だまりのように、穏やかで、確かな温もりを持っていた。
「ここで約束するよ。何があっても、絶対に君のそばにいるって。だから――信じてほしい。いつもみたいに、ね。」
口元にふっと微笑みを浮かべながら、まるで傷ついた小動物を包み込むような優しい調子で言った。
「もし本当に逃げなきゃならないなら、俺のサバイバルスキルの出番だな。テント張って、火を起こして、食べ物を探して――そういうのは全部任せてよ。」
「生活のことだって、君が薬を作って、俺がケーキを焼けばいい。どこか誰も俺たちを知らない、小さな静かな町で……そんな場所で、穏やかに暮らせるかもしれない。追われるよりも、山の中に小さな家を建てて、花を育てながら生きる方が、ずっといい気がするよ。」
彼の瞳がきらりと輝き、まるですでにその光景を見ているかのように語る。
「それに、あの温泉にも毎月行こう。霧の中、湯に浸かる君の隣で、俺が焼いたケーキを差し出す――そんな日々って、悪くないよね?」
最後に彼は少し表情を引き締めて、まっすぐに夢子を見つめた。
「だからさ、どんなに苦しい日でも、俺のケーキを一口食べてくれたら、きっとほんの少しの幸せを感じられるはず。明日でも、明日のさらに先の明日でも、俺はずっと、ここにいるよ。」
「何があっても、私はあなたのそばにいるから。だから、一緒に笑って、“孤独じゃない明日”を語り合おう。」
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