第51話 06 たとえ記憶が消えてしまっても、永遠に生きるより、私はその儚さを選ぶ
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「これ以上は話せない……」
一人の男が焦るように低くつぶやいた。「でも君は、僕たち二人を助けなきゃならない。君一人じゃ無理だ。でも僕たちがいれば、必ずうまくいく。」
ホウ・ペイは沈黙したまま立ち尽くし、やがてゆっくりと背を向けた。まるで彼らの言葉など最初から聞こえていなかったかのように。
そのとき、洞窟の入口から軽やかな足音が聞こえ、馴染み深い声が空気を裂いた。
「どうしたの? 侵入者はちゃんと檻に入れた?」
夢子は洞窟に戻ってきた。彼の顔を見てすぐに異変を察したようで、少し表情を曇らせた。
「……その顔。記憶の消去、もう今やっちゃう?」
しかしその瞬間、檻の中の二人が大声で叫び出した。
「やめろ! 僕たちは貴族なんだぞ!」
「この邪悪な魔女め! お前の罪は必ず裁かれる! ホウ・ペイ! 一緒に正義のために戦おう! この女を倒すんだ、僕たちならできる!」
夢子は彼らの叫びに一切取り合わず、ただ眉をひそめ、困惑気味にホウ・ペイを見つめた。
「この二人、知り合いなの? どうして君の名前を?」
ホウ・ペイは頭をかきながら気まずそうに答えた。
「うん……まあ、昔の友達ってところかな。正直、今はあまり話したくないけど……あとでちゃんと説明するよ。でも今は、お願いだ、彼らの記憶を消さないでほしい。もう少し……話しておきたいことがあるんだ。」
夢子は少し黙ったあと、やわらかく微笑んでうなずいた。
「わかった、君のことは信じてるし……まあ、君たち三人じゃ逃げ出すなんて無理だしね。ふふ、じゃあ私は外で薬草でも採ってくるわ。」
彼女が洞窟を出ていくのを見届けてから、ホウ・ペイは再び檻に近づいた。
「さあ、詳しく話してくれ。」
すると一人の男が、どこか得意げに目を輝かせながら語り始めた。
「君は知ってるかい? なぜあの女が、何百年も生きてるのに、若い姿のままなんだ? まるで老いも死も知らないように……おかしいとは思わなかった?」
「そう……彼女が持っているのは、不死の魔法だ。」
もう一人が声を潜めながら続けた。
「このことは国家の極秘事項だ。国が彼女を追っているのは、彼女が危険だからじゃない。ただその魔法を、どうしても手に入れたいんだ。」
「もし彼女を捕まえて、力を奪えたなら……復活、永遠の命――そんな奇跡さえ現実になる。」
彼は檻の鉄格子に顔を近づけ、熱を帯びた視線でホウ・ペイを見つめた。
「考えてみてよ。君が僕たちに協力すれば、大きな功績を得られる。そうなれば……彼女に魔法を使わせて、君の両親を生き返らせることだって、簡単にできるんだ。」
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