表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10万pv突破しました!!!【每日更新】史上最強の幽霊剣士  作者: Doctor Crocodile


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

827/1125

第51話 04 細雨が陽光をやさしく撫でるように降り注ぐ




---


夜の帳がゆっくりと降り始め、銀色の月明かりが高く掲げられた天幕からそっと降り注ぎ、山の洞窟の入り口を柔らかく照らしていた。空気はしんと静まり、葉の間から差し込む光が、岩肌に繊細な模様を描き出していた。


二人の人影が、ひとすじの歪んだ転送魔法の光と共に現れ、ふわりと地に降り立った。


「……今日は本当に、長い一日だったなあ。」


ホウペイは体についた埃を軽く払いつつ、少し疲れたような笑みを浮かべながら言った。


夢子はゆっくりと背伸びをして、さらりと揺れる髪を指先で整えながら言葉を継いだ。


「そういえば、明日ちょっと外に出るわよ。町に食料を買いに行かないと、家の食糧がもう底をつきそうだからね。……こっちの森はお願いね。もし誰かが入ってきたら、すぐに察知できるようにはしてあるけど……まあ、」


彼女の声が少しだけ柔らかくなった。


「……大丈夫よね? 逃げたりしないでしょ?」


ホウペイは彼女の表情に一瞬驚きつつ、穏やかに笑った。


「逃げるなんて、ありえないよ。変な言い方だけど……ずっとここにいられたら、それだけで充分幸せかもしれない。ありがとう、俺を信じてくれて。絶対に裏切ったりしない。」


彼はふと目を伏せ、静かに続けた。


「いろいろあったけどさ……君には、本当に救われた。久しぶりにこんなにも、心から笑えたし……自由っていう感覚を、ようやく思い出せた気がする。」


夢子もまた、少し驚いたような顔をしたが、すぐにふわりと微笑み返した。


「ふふ、私もよ。君みたいな相棒なんて、本当に久しぶり。……侵入者が来たら、なるべく早く戻るから、それまでの間、なんとか引き伸ばしておいてね?」


「どうやって引き伸ばせばいいのさ? 俺、武器も持ってないんだけど。」ホウペイが肩をすくめて言うと、


夢子は急に真面目な顔をして彼の肩をぽんと叩き、声をひそめて言った。


「こういう時こそ……その美貌を使って誘惑するのよ。」


「はあ!? ふざけるな!」ホウペイは顔を真っ赤にして跳ね上がる。「ケーキ食べすぎて、頭の中が全部クリームになったんじゃないのか?」


「はん、ケーキしか作れない冒険者には言われたくないわね。」夢子がすかさず応酬する。


「俺は本気出せばめちゃくちゃ強いんだよ! 隠れた実力者ってやつさ。目立たないところで一撃必殺。つまり、知恵ってこと! それは君が持ってないやつな!」


「……はあ、なるほど。じゃあ今すぐその“知恵”とやらで、この薬を避けてみなさいよ!」


夢子が怪しげな薬草入りの丸薬を取り出し、無理やりホウペイの口に押し込もうとした。


「ちょっ、やめろ! 殺す気かーっ!」


二人はまたしても、山の静けさを壊すようにじゃれ合い、笑い合いながら、いつものように喧嘩(?)を始めた。


そんな愉快な時間は、夜が明けるまで続いた。


そして翌朝——


朝日が山の縁からゆっくりと昇る頃、夢子の姿はもうそこになかった。


一人になったホウペイが山洞の中央に腰を下ろしたその時——胸に身に着けていた小さな魔力探知器が、静かに震え、青い光を点滅させ始めた。


「……これは?」


夢子が設置していった“魔力警報装置”。それが今、確かに反応している。


誰かが、この森へと足を踏み入れたのだ——



---




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ