第51話 01 孤独に満ちた歳月
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「正直言って……この転送紙、本当に便利すぎるよな。」
黄金色の落ち葉がふわりふわりと足元に舞い降り、ホウ・ペイは柔らかな林の小道を歩きながら、手にした紙片を指でくるくると弄びつつ感嘆の声を漏らす。
「まさか門番をすり抜けて、いきなり中に転送されるなんて……この技術、売り出せば一財産築けるかもしれないな。」
夢子は最初こそ何気なく聞いていたが、ふと瞳にひらめきの光を宿し、下を向いたままぶつぶつと呟き始めた。
「もし今から事業計画を立てて、金持ちのバカどもをスポンサーにして……それから量産して、魔法アイテムの流通会社を立ち上げて……買い手もどんどん増えて、私たちの評判も広がっていって、最終的には――私たちだけの魔法ビジネス帝国を築くことができるかも……!」
その声には、抑えきれない高揚が混じり、話すスピードもどんどん早くなる。まるで彼女の脳内には、すでに輝かしい未来の光景が浮かび上がっているかのようだった。
「おいおい、俺はただの冗談で言っただけなんだけど……」ホウ・ペイはあきれたようにため息をつき、彼女に向き直って言った。「それに……迷子になって転送陣をループするような知能じゃ、計画どころか薬作りしか向いてないんじゃない?」
夢子はプンと怒ったように足を踏み鳴らし、頬を真っ赤に染めて叫ぶ。
「なっ、なんですって!? よくもそんなことを……! いいわ、帰ったらあんたの昼ごはんに三時間お腹が痛くなる薬草を混ぜてやるんだから!」
ホウ・ペイは慌てて手を振り、必死に弁解する。
「ちょっ、待ってくれ! 頼むからそれだけは勘弁してくれよ! この前だって……打ち上げ花火みたいにゲップ止まらなくなったあの薬、死ぬかと思ったんだから!」
夢子が得意げに笑いかけようとしたそのとき、ホウ・ペイの足がピタリと止まった。彼の表情が、一瞬で穏やかで静かなものに変わる。
「……着いたよ。ここが――俺の両親の墓なんだ。」
その声は風に溶けるように柔らかく、どこか懐かしさすら感じさせた。
夢子もまた、思わず言葉を飲み込み、表情を引き締めた。




