第50話 09 「流星が夜空を駆ける、この時間が永遠に続きますように」
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流星が夜空を駆ける、この時間が永遠に続きますように
それでも、ホウ・ペイは持ち前の根性と気力で、とうとうその信じがたい買い物リストをすべてこなし、夕暮れが山の端に沈む前に帰還を果たした。重たい荷物を背負った彼の姿は、まるで疲れ切った荷運び人そのものだった。
「なんでこんなに買い込まなきゃいけないんだよ……」
ホウ・ペイが嘆くと、洞窟の入口にある岩の上でくつろぐモコが、涼しげな表情で言った。
「これでしばらくの間は外に出なくて済むでしょ? 一度に全部片付けた方が楽でしょ?」
「……はいはい。」
ホウ・ペイがため息をついた次の瞬間、モコはさらりと追加の任務を言い渡した。
「じゃあ次は、洞窟全体の掃除ね。」
「冗談だろ!? この巨大迷宮みたいな洞窟を全部!? いやいや、無理無理!」
だが、モコは軽く手を振ると、魔法で荷物をふわりと浮かせて奥へと消えていった。
どうにか午前を乗り越えたホウ・ペイは、陽光が洞窟の壁に斜めに差し込む中、ほとんど崩れ落ちそうな声で呟いた。
「もう午後は休ませてくれよ……」
「ダメよ、次は薬草を取りに行くから。」
いつの間にか戻ってきたモコが、さらなる指令を冷静に告げる。
「私一人じゃダメなのか?」とホウ・ペイは苦笑い。
「あなたがいない間に逃げ出されたら困るでしょ? それにね、今回の仕事が終わったら特別なご褒美をあげるわよ。」
「ご褒美ねぇ……はいはい、楽しみにしてますよ……」
嫌々ながらも、ホウ・ペイは再び空を飛び、モコとともに谷や川を越えて目的の場所へと向かった。
モコは立ち止まり、説明を始めた。
「探しているのはね、細くて優雅な花穂を持つ草。五角形の花びらの中心は雪のように白く、縁はほのかに紅く染まっていて……香りは柔らかく清らか。できるだけ日が沈む前に見つけましょう。」
それからふたりは、日差しがゆっくりと傾く中、地を這うように薬草を探し続けた。
やがてモコが呟く。
「もう暗くなってきたわね。明日にする? ちょっと薬作りは遅れちゃうけど……」
「いや、見つけたかもしれない。」
ホウ・ペイは慎重に一輪の花を取り出した。それは確かに、モコが語った通りの花だった。
「それよ! 本当に助かった、ありがとう。」
モコの顔がふわりと明るくなる。
「どういたしまして。あなた、急いでたでしょ? あと……お金の稼ぎ方って、つまり薬を作って売ってるってことだよね?」
モコは黙って頷いた。
「なら、手伝えてよかったよ……それで、ご褒美って?」
ホウ・ペイが問いかけた瞬間、彼の腕を掴んだモコが空高く舞い上がった。
「ちょっ、待てって! 飛ぶってそういう意味じゃないよ!? 高すぎるっ!」
雲を突き抜け、二人は星空の中へと躍り出た。吐く息すら凍るような高度で、モコはふっと微笑む。
「よく見て。こんな光景、そうそう見られるものじゃないから。」
その言葉と同時に、夜空をいくつもの流星が駆け抜けた。光の尾を引きながら、燃え上がるように煌めく星々が天空を彩っていく。
「どう? 綺麗でしょ。今日一日頑張ったあなたへの、お礼よ。」
ホウ・ペイは一言、静かに呟いた。
「うん……ほんとうに、綺麗だ。」
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