第49話 02 「まもなく始まる、村の記念祭」
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「リードたちはどうしてる?今でもチームのままかな?」
ニックスはふと夜の街を見やりながら、懐かしそうに尋ねた。
「もちろんよ、あの子たちはずっと一緒。」
ムコは優しく笑って答えた。
「あなたが戻ってきたって知ったら、きっとすごく驚くわよ。でも今は任務中だから、たぶん明日にならないと帰ってこないと思う。今夜はもう遅いし、まずはゆっくり休みましょ。」
彼女は小さくあくびをして、疲れを隠さずに肩をすくめた。
「明日になったら、あなたの冒険の話をたくさん聞かせてあげて。きっとみんな夢中で聞くと思うわ。」
そして、眉間に皺を寄せながら続けた。
「私も、今この時間をちゃんと大切にしなきゃね。病院の仕事がどれだけ忙しいか、あなたには想像もつかないと思うわよ。ここ三日間、まともに眠れてないの。夜中に急な呼び出しばっかりで……でも、今日は何も起きないといいな。今のうちに帰って、少しでもぐっすり眠りたい。話の続きは明日にしましょう。」
ムコはそう言って笑い、最後にぽつりと付け加えた。
「そうそう、もし村長に会いたいなら、今も家にいるわよ。」
「ありがとう。」
ニックスは感謝の気持ちを込めて軽く会釈した。
夜の静寂に包まれた村は、灯りがぽつぽつとともり、まるで星のように暖かい光を道に落としていた。ニックスは慣れ親しんだ石畳の道を歩きながら、胸に込み上げてくる懐かしさを噛みしめていた。
「この村、やっぱり小さいな。でも……小さいからこそ、おもしろいことがたくさん詰まってるんだ。」
彼は懐からあの小さな身分証の徽章を取り出し、そっと握りしめた。
「これを村長に返さないとな。すぐに戻ってくるから、待たなくていいよ。」
木の家の前に立ち、軽くノックする。
「どうぞ。」
中から聞こえてきたのは、落ち着いた年配の声だった。
「村長、僕です。」
ニックスが扉を開けて入ると、新聞を読んでいた村長が顔を上げた。
「ああ、君か、少年。」
村長は穏やかな笑みを浮かべ、新聞をテーブルに置いた。
「さっき外が騒がしかったから、何かあったのかと思ってたが……なるほど、君が帰ってきたのか。」
彼はニクスの姿をじっと見つめながら、優しい声で続けた。
「王都が襲撃されたって話を聞いたよ。君も巻き込まれたんだろう?ここでゆっくり休むといい。本当にお疲れさまだ。」
「いえ、それほどでもないです。」
ニックスは穏やかに微笑んだ。
「むしろ、いろんな仲間と出会えましたし、師匠もできました。」
「そうか、それは何よりだ。」
村長の目元がさらに和らぐ。
「いいことは続くもんだな。しかも君が帰ってきたタイミングが絶妙だ。ちょうど数日後に、村の記念祭があるんだよ。王都ほど派手ではないけれど、きっと楽しいはずさ。楽しみにしててくれ。」
「それはちょうどいいですね、少し羽を伸ばせそうです。」
ニックスはあくびをかみ殺しながら立ち上がる。
「そろそろ眠くなってきました。もし何かあったら、明日また声をかけてください。」
「うむ、ゆっくり休むといい。」
村長は穏やかに頷きながら、再び椅子に腰を下ろした。
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