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10万pv突破しました!!!【每日更新】史上最強の幽霊剣士  作者: Doctor Crocodile


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第48話 最終章 陽が昇りきった空の向こうに、夕焼けの道を探しに行く




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「お前、俺が身体を操ってるときに何か起こるって、怖くなったりしないのか?」


幽霊の声が意識の奥底で響いた。いつものように冷静な口調だったが、どこか躊躇いの色が滲んでいた。


ニックスはその言葉に対して、ふっと微笑んだ。まるで長年の友人にかけられた冗談に応えるように、柔らかく、しかし確かな笑みだった。


「この数日、特に問題なかったでしょ?だからさ、当然、君のことは信頼してるよ。俺たち、もうずっと一緒にやってきただろ?」


「正確に言えば……5か月と24日、7時間34分53秒。」


幽霊はまるで時計のように正確に答えた。


「そんなに正確に覚えてるのかよ……」


ニックスは驚き、目を丸くした。


「忘れるわけないだろ。俺が人生最悪の災厄に巻き込まれた日だ。まったく、あんな厄介なやつに出会ったんだからな。」


「ひどいな~。そんなに俺ってダメか?」 ふっと笑いながら、ニックスが言った。


「……そうだ、あの小さいやつは?ずっと姿見てないけど。」


「お前の言ってる小精霊か。あいつも一緒に第三の魔法石の衝撃を支えてくれた。でもあいつは弱いからな。今は多分、しゃべる力すら残ってない。休んでるよ。」


「そっか……」


ニックスの表情が少しだけ優しくなった。


「まあ、俺はお前の魔力神経をずっと安定させておくことはできないけど、俺が“入る”時間帯を決めれば、無駄な混乱は避けられる。昼はお前、夜は俺って感じで交代制にすればいい。重要な時に急に人格が変わる、なんてことは防げるだろ。」


「なるほど、賢いな。」

ニックスは感心しながら頷いた。


「あと、魔法石のことだけど……もう対策はできてる。本物は空間に隠して、偽物を例の隊長に渡せばいい。そうすれば、誰にも気づかれない。」


幽霊は小さくうなずいた。


「よし、そうしよう。」


意識の空間がゆっくりと霧のように溶けていく。ニックスはくるりと身を翻し、現実に戻ろうとするが、ふと立ち止まり、笑みを浮かべて幽霊の方を振り返った。


「ところで、お前……俺になってるとき、何やってるんだ?」


答えが返る前に、目の前の世界が光に包まれ、意識は現実へと引き戻された。


「……まったく、人のセリフも最後まで聞かないなんてな。」



ニックスは静かに病室のベッドに横たわっていた。カーテンの隙間から差し込む朝の光が、まるで柔らかな金のヴェールのように彼の顔を優しく照らしていた。夜の気配がまだ微かに残る中、新しい一日が静かに幕を開ける――それはまるで、馴染みある物語の続きがそっと始まるようだった。


翌朝、ニックスとセイ、アイト、エリサの四人は、再び王都の壮麗な門の前に立っていた。朝靄がゆっくりと漂う中、石畳はわずかに湿り気を帯びて鈍く光り、ほんの数日前と同じ情景がそこに広がっていた。


「……なんかこの光景、すごく見覚えがある気がするな。」ナイトが腕を組みながら、眩しそうに目を細めて呟く。


「そりゃそうさ。つい数日前に、まったく同じことがあったばかりだからな。」ザックが笑いながら言い、ニックスの肩を軽く叩いた。その口調には、どこか安心したような軽やかさがあった。


「おい、今度はもう問題を起こすなよ。」ナイトは腰に手を当て、わざとらしく真面目な顔で言った。「とにかく、今回の旅がうまくいくように祈ってるよ。それからニックス、お前は絶対に無理しちゃダメだからな!」


四人はお互いに顔を見合わせ、ふっと笑みをこぼした。その笑顔には、嵐を乗り越えた仲間だけが分かち合える温かさがあった。そして、彼らは力強く抱き合い、それぞれの胸に言葉では言い尽くせない想いを託した。


ナイトとザックに見送られ、四人は後ろを振り返ることなく歩き出した。目指すは――夕焼け村


朝の光が彼らの背中を優しく包み込み、まるで新たな旅路の序章を照らすかのようだった。風が髪をなびかせ、空の彼方には淡いオレンジ色の光が広がり始めていた――まるで彼らの帰還を、そっと見守っているかのように。



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