第48話 17 「いつかまた会えるその日が、雲ひとつない青空でありますように」
---
「そんなに俺たちのことを軽く見ないでよ。」
ふたりの声は、まるで深い森に響く風のように静かで、けれど心の奥に強く届くものだった。
「夢でも、現実でも構わない。たった一つだけ変わらないことがある。それは、私たちはいつまでも――永遠にお前を愛してるってことだ。」
「お前がここに来て、私たちの子になってくれた……それが、私たちにとってこの上ない幸運なんだ。」
「だから、自分のやりたいことをやりなさい。迷わず、前へ進むんだ。私たちはいつだってここでお前を見守ってる。いつでも、帰ってくるのを待ってるから。」
ふたりは同時にそう言い、微笑んだ。
「うん……僕も、こんな家族に出会えたことが、人生でいちばんの幸せだと思ってる。」
ニックスのまわりの景色が、まるで空に溶けるように、そっと消えていくのを感じた。
「必ず、無事に戻ってきなさいよ。」
「うん、約束するよ。」
最後に、ふたりの姿も光の中に溶け、静寂の中にニクスだけが残された。
「……いい夢だったな。」
ニックスはそっと目を閉じ――そして、ゆっくりと瞳を開ける。
点滴の刺さった腕、機械の静かな音、そして耳元に聞こえる微かな寝息。
彼は横を向いた。
そこには、椅子に寄りかかって眠っているホシの姿があった。
「ずっと……看病してくれてたんだな。」
そう呟きながら、自分のかけていたブランケットをそっと彼女の肩にかけてやる。
まだ少し足元がふらつく中で、ニックスはゆっくりと立ち上がり、自室の扉を開ける。
すると、廊下には何人もの仲間が集まっていた。
「これは……」
ニックスは、思わず微笑んだ。
「目が覚めたんだな!」
エイトが真っ先に声を上げた。
「まだ起きてたんだ? 外を見ると、もう夜だよね。」
「うん、小説読んでてね。面白くて、眠れなかったの。」
「へえ……で、その小説はどこに?」
「……今から寝ようと思って、鞄にしまったの!」
エイトは少し照れくさそうに答えたあと、真面目な顔で言った。
「でもね、体内の幽霊にはちゃんと感謝しなさいよ? あんな無茶、あんた一人の力じゃ無理だったんだから。」
「……やっぱり、あいつは僕の仲間になるべき存在だったんだ。」
ニックスは穏やかな笑みを浮かべた。
「もう二度と……あんな危ないこと、しないでよ。」
エイトは俯いて、小さな声で言った。
「うん、大丈夫。もうしない。約束するよ。」
彼がそう言って、頭をかきながら笑ったそのとき――
エイトは不意に彼を強く、そっと抱きしめた。
その温もりの中に、すべての心配と不安が溶けていった。
---




