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第7話14誰が勇者で誰がドラゴンなのか?

村長の言葉は、重く、そしてどこか寂しげだった。彼の目は遠くを見つめていたが、それは今ここにはない過去の戦場を見ているようだった。


「火の事件」


その名は、歴史の中に刻まれたただの言葉かもしれない。しかし、それは多くの命が失われ、奪われた場所の記憶だった。燃え盛る炎、崩れ落ちる村、響き渡る絶望の叫び——それらを見届けてきた者の言葉は、どこか取り返しのつかない悔恨を孕んでいた。


「……それで、村長は今もここにいるんですね」


ニックスは静かに言った。


村長は目を閉じ、微かに微笑んだ。


「そうだ。私はもう、誰かの命令に従って戦いたくはない。だから、この村を“守る”ことを選んだ。それが私の罪滅ぼしだと思っている。」


——火炎の精霊たちにとって、私たちは悪者なのだろう。


その言葉が、ニックスの胸を締め付けた。彼らにとって、村長も、王国も、人間も、すべて憎むべき存在なのかもしれない。しかし、村長の言葉の通りならば、人間もまた、自分たちの家を築き、守るために戦っていた。


「戦争とはそういうものだ。」


その言葉の意味を、ニックスはようやく理解した。戦争に正義も悪もなく、ただそこにいる者たちは自らの信じるものを守るために戦う。炎の精霊たちも、村長も、そしてニックス自身も——誰もが、自分の信念のために剣を振るう。


「勝った者が歴史を作り、その正義を語る……」


ニックスは呟いた。


村長はゆっくりと頷く。


「そうだ。この世界のすべての人間が英雄であり、同時に罪人なのさ。私も、君も、カニディも——そして、火炎の精霊たちも。」


静寂が部屋を満たした。窓の外では、夕日が静かに沈み、空を赤く染めていた。まるで戦火の残り火のように——。



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