第48話 04 千手白影
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右手で地面に突き刺さった剣をしっかりと握り、ニックスはまるで幽霊のように素早く滑るようにカスへと迫った。剣先が空気を切り裂き、鋭い閃光を放つ。一撃は見事にカスの体を捉えた――カスは重力防御を展開する暇すらなかった。
私は気づいた――重力を使う時は、同時に重力防御を維持できない、非常にシンプルな原理だ。
カスの胸に鋭い傷跡が走り、その位置はかつてニックスが彼の衣服を掴んだときに残された痕だった。
だが、これは始まりに過ぎなかった。
ニックスは一連の動きを止めず、鋭く蹴り上げてカスを宙へと蹴り飛ばした。
続けざまに自らも跳躍し、空中で二連蹴りを放つ。蹴りの反動を利用して地面に着地し、すぐに三連蹴りを叩き込む。
連続した攻撃はまるで嵐のようにカスを何度も空高く打ち上げ、彼に反撃の隙を与えなかった。
カスは表情を歪め、重力で脱出しようと試みる。
だが、ニックスの姿はすぐに彼の前に現れ、展開していた幽霊の翼が瞬く間に実体の両手となり、カスをしっかりと掴み取る。
「逃げられると思うなよ。」
必死にもがくカスだったが、まるで鉄壁に閉じ込められたかのようだった。
しかし彼はふと、ニックスの以前の行動を思い出し、自身の魔力を爆発的に解放する。
魔力の奔流により、見事に束縛から脱し、強烈な重力を引き起こして自分を地面へと引き戻した。
ニックスは流星のように高空から落下し、彼を捕らえていた両手はすぐに解かれ、素早く幽霊の鎧へと戻った。
二人は再び地面で向かい合った。
「お前、視覚の死角なんて無いのか?」カスは歯を食いしばりながら呟いた。
ニックスは微かに笑みを浮かべ、落ち着いた口調で答えた。「俺はお前とは違うんだ。」
一歩横に踏み出し、自信に満ちた瞳で言う。「俺は一人じゃない。」
「俺のことだ、バカめ。」
幽霊が軽蔑の笑みを浮かべながら言い放つ。
「それに俺もいる。」
ニックスの剣から低い声が響いた。その剣はまるで生きているかのように語りかける。
「見たか?俺は三人分の力を持っている。だから視覚の死角なんて存在しない。
お前にはあるけどな。」
カスは身体を震わせ、ハッとした。振り返ると、三人のニックスが一斉に彼に向かって突進してきている。
しかし今回は、どれが本物なのか判別できなかった。
「一人だろうと二人だろうと三人だろうと関係ない!」
カスは歯を食いしばり叫んだ。「これが本当の数の力だと見せてやる!」
彼は手を一振りし、地を震わせるような声で叫んだ。
「――千手白影!」
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