第48話 01 《終焉の輪》
---
ニックスの剣さばきは、まるで疾風怒濤。鋭く、途切れることなく連続して繰り出される。その一撃一撃に宿る圧倒的な殺気は、見る者の心を掴んで離さず、カスの拳と何度も激突しては、火花と魔力が空中で絡み合い、耳をつんざくような轟音となって降り注いだ。それは、まるで天地を打ち付ける豪雨のようで、一つひとつが嵐の雷鳴のように重く響く。
戦場の中心、紫と黒の魔力がぶつかり合うさまは、二筋の雷光が交錯し、もつれ合うような光景。剣閃と拳風が編み上げるのは、きらめく魔力の網。ニックスの速度はますます増し、ふたりの動きはもはや目に見えぬほど高速で、空気すら裂けて悲鳴を上げる。やがて、二人の衝突点には、激しく脈動する光の球体が生まれた——灼熱、危険、いつ崩壊してもおかしくない圧倒的な力の塊。
突如、両者は同時に力を解き放ち、魔力の反動で高空へと舞い上がった。だが、空中でも戦いは止まらない。ふたりは滑空しながら、次々と軌道を変え、真っ直ぐな衝突線を何本も空に描き出していく。その光の交錯は、まるで夜空に刻まれる剣の舞——殺戮者たちの輪舞曲だった。
ニックスは再びカスの防御を突破しようとし、幽霊化の能力を使って空間の隙間から奇襲を試みた。しかし――今回は違った。
「……なっ!?」
驚愕する彼の目の前で、カスは片手で彼の剣をしっかりと受け止めた。その手は、魔力に焼かれることをまるで恐れていなかった。次の瞬間、カスの膝が鋭くニックスの腹部に突き刺さり、彼を大きく後方へと吹き飛ばした。
だが、体勢を整える間もなく、空間全体を歪めるほどの強烈な引力が突如として発動する。まるで目に見えぬ重力の鎖が彼を捕らえ、再び力ずくで引き戻したのだ!
カスは無慈悲にニックスの喉元を掴み、その冷たい瞳で見下ろした。その眼差しは、まるで死神が最後の審判を下すかのよう。ふたりの体は隕石のように地上へと墜ち、周囲の空気は激しく収縮し歪み、落下の衝撃が大地を引き裂いた。
轟音とともに、地面は十字に裂け、巨大なクレーターが出現。その中心で、ニクスは動けず倒れていた。息は乱れ、身体は微かに震え、もはや反撃の力は残されていなかった。
「……もう終わりだ。」
カスは静かに彼の上に立ち、かつて強大だった敵を見下ろす。冷酷で、静かな声が響く。
「お前の攻撃は、もう二度と俺に届かない。」
「その幽霊化ってやつ……完全に自分を消してるわけじゃない。ただ空間の隙間に身を潜ませてるだけだろう?空間属性の能力ってやつか?」
カスは薄く笑い、手のひらに黒い重力魔力を渦巻かせながら続けた。
「奇遇だな。俺も同じなんだよ。」
「どんな次元に隠れようが、どんな空間に消えようが……俺の引力は必ずお前を引き戻す。お前じゃ、俺には勝てないんだよ、ニックス。」
その言葉と同時に、カスの手の中で黒の魔力が急速に収束し、鋭く、致命的な一撃となってニクスの胸元を狙う。
「——これでしばらくは、歩くことさえできなくなるだろうな。」
ゼロ距離から放たれたその攻撃は、容赦なくニックスの体を貫き、激しい爆風が周囲を吹き飛ばす。クレーターの奥深くに土煙が舞い上がり、カスはそれを見て、すべてが終わったと確信した。




