第47話 18 時がスローモーションのように流れる
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魔力がまるで火山のごとく体内から噴き出し、灼熱の気場となって狂い吹き荒れる。空気すらこの瞬間に震え歪むようだった。彼の周囲を渦巻く暴走するエネルギーは、紫の炎の奔流となってニクスの身体を包み込み、圧倒的な存在感を放っていた。
そして、その猛烈な魔力の炸裂とともに――
天地すらが凍りついたかのように、時間が止まる。
無数の矢が彼めがけて降り注ぎ、長空を切り裂きながら風鳴りを響かせる。しかし、それらすべてがニックスの目には異様なほどに―緩やかに―映っていた。矢はまるで薄い水中で浮遊するように、動きは緩慢で、それぞれの羽根の繊細な模様さえ数えられそうだった。
彼の歩みは極めて悠然としていた。まるで豪雨のなかを舞う舞踏家のように、狼狽も恐れもなく。
片側に身体をそっと流すと、最初の一矢が耳元を掠める。髪一本たりとも触れはしない。
次に彼が腰をひねると、二本目の矢が滑るように過ぎ去る。
さらにその後、ニックスは軽やかに跳び上がり、流麗なバックフリップで三本目の斜め矢を見事にかわす。獲物をかわすヒョウのように優雅に、正確に。
矢雨はなおも銀河を逆流するかのように激しく降り注いだが、ニックスの動きは次第に加速し、それが彼のリズムに合わせて奏でられる音楽のようにすら思えた。
彼は死と風音の狭間を繊細な芸術品のように舞い、あらゆる筋肉が直感と融和するかのように反応した。
やがて――前方の矢は一面の壁となり、もう回避不能に見えた。
だが彼は、足を止めた。
千本の矢が命中する瞬間、ニックスは両腕を大きく広げ、顔を僅かに天に向け、瞳を閉じた。まるで運命を受け止める儀式のように。
矢は彼を貫いた──が、血は一滴も見えない。
彼の身体は霧のように曖昧になり、矢雨を透かして消えていく。そのすべては幽霊の加護によって―死の縁から彼を守ったのだった。
数秒後、ニックスはゆっくりと目を開けた。口元には不気味な笑みが浮かんでいる。右手で長剣を固く握り、膝を僅かに曲げ、身体を方向転換させた。足元の大地が低く唸り、次の瞬間、彼は紫電のごとく突き出した!
──紫の閃光が裂けるように空気を貫き、残像と風裂け音が混ざり合う。その数え切れない刀光は星屑のように瞬き、降り注ぐ矢雨を美しく切り裂いた。
再び姿を現したとき、彼はすでに矢雨の向こう側――全てのゴブリン弓手の死角にいた。
左手で鞘を掴み、右手に剣を握り締める。その動作はまるで神秘的な儀式のようだった。剣をゆっくりと鞘へ納める。
「カチリ。」
紫の光が一瞬爆ぜ、空気は一瞬引き締まる。すると――
「カカカカカカッ――!」
空中に残されたすべての矢が、同時に音を立てて真っ二つに砕け散った。破片はまるで花吹雪のように舞い落ちる。
遠くで見ていたカスはその異様な光景に息を呑み、瞳孔が吊り上がる。
「…力、速度、反応、精度……すべて別次元だ……これは…」
思考が追いつかない内に、その刹那、ニックスは紫雲のように再度爆走し去った――
彼の次なる標的は、もはや矢ではない。
それは――大群の魔物軍だった。
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