第47話 14 「守護と名づけられた極光」
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衝撃波の余韻がようやく収まると、戦場には一瞬の死寂が訪れた。巨大な竜の巨躯はかすかに震え、かつて鋼のように堅固だった鱗が次々と剥がれ落ちる。砕けた一枚一枚が塵となって地に散り、その下からは焦がれた肉が露わになり、深い赤が大地を染めていた。竜の血は全身から滲み出し、力尽きた眼は燃え盛っていた熱を失い、血走りと疲労が濁った瞳に宿っている。
それでも、剥がれた鱗はみるみるうちに再生し始め、まるで灼熱の鍛冶場で再び鋳造されたかのように、肉眼ではっきりとわかる速度で戻っていった。
周囲の人々はほとんど倒れ、もはや立ち上がれない者も多い中、ただ一人──ナイトだけが、揺るぎなく立ち続けていた。
「まさか…自爆技まで使ってくるとはな。」
彼は血をにじませながらも静かに呟いた。
「けど、その代償も大きかったようだな。千の敵に傷つけられ、自分も八百は削られたか…あと少しで俺たちも全滅だった。」
彼──ナイトは、金色に輝く鎧に包まれ、その光はまるで聖なる防壁のようだった。しかしその輝きは血で曇り、額や肩、胸や腕には鮮血が染み出していた。金のバリアは、時の砂のように少しずつ零れ始めていた。
「幸いだったな…単発の攻撃じゃなくて。」
歯を食いしばり、苦笑を浮かべる。
「拡散型の衝撃なら、俺の最強防御術でもぎりぎり耐えられた。」
竜はその声に反応し、血まみれの口を開いて、再びエネルギーの塊を腹の奥で凝縮しようとしたが——その塊は喉で滞留し、やがて黒紅の血液となって吐き出された。大地に跳ねる血しぶきが、焦土に暗い弧を描く。
ナイトは静かに歩を進めながら言った。「どうやら…お前も、あの技はもう使えないらしいな。これでちょうど公平か——お互い、重傷を受けた者同士だ。」
言葉と同時に、彼の黄金の鎧は砂のように崩れ落ち、血に濡れた衣服と傷だらけの裸体が姿を現した。
竜は最後の力を振り絞ったかのように、翼を大きく広げ、天空へと舞い上がっていく。俯瞰するように、大地を睥睨しながら。そして、倒れずに見上げるナイトに向けて、最後の急降下を開始した。
ナイトは薄く微笑むと、肩に杠りながら大剣を担ぎ直した。内なる魔力を剣身に集中させ、五色に輝く光を放ち始めた。それはまるでオーロラの尾を引く炎のように、黄昏の空に煌めく。
「これは…師匠の剣技だ。」
彼は低く呟いた。
「だが、この年月で俺が習得できたのはこれだけだ。」
ナイトは剣を正面に構えた。目の前をすべて見渡すような鋭い視線で、竜へと向き直る。覚悟の光を宿し、二度とは屈しない強い意思がその眼差しにある。
「ならば、見せてやれ──お前の力が、俺の守る意志を砕けるかどうかを!」
彼は鋭く踏み出し、剣を振り上げた。その刃は天を裂くように軌道を弧を描き、まるで希望を携えた彗星が落ちるように振り下ろされる。
「オーロラ・スラッシュ——!!」
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