第47話 12 last hit
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シャーの身体が突然震え、ねじれた光と影となって、炎と煙の中で急速に変化した。彼の姿は再びあの見慣れた形に戻る――灼熱のマグマのような気配をまとった魔物の魔導士。その足元には、今にも溶けそうな熔岩が流れているかのようだった。
「幻術だ!」
龍の瞳孔が一気に収縮し、その瞳は焦点を失って暗く濁り、巨体は空中で動きを止めた。彼にとって現実はすでに曖昧――幻の世界に囚われていた。周囲は煮えたぎるマグマの海。どれだけ羽ばたいても、熱を帯びた熔流は影のようにつきまとい、龍の体を包み、呑み込もうとしていた。
しかし――
「この幻術、長くは持たない……!」
シャーは歯を食いしばり、震える両手を必死に支えながら、額に冷たい汗をにじませた。
「この龍の精神力……とんでもなく強い!」
「今だ!」
サンディが空へと舞い上がる。体中にエネルギーが奔流のように満ち、金と紅の光が彼女を包み、ゆっくりと天へ昇っていく。地上では、ザックが目を閉じて座り込み、眉をひそめながら魔法陣にエネルギーを注ぎ続ける――
「攻撃力……最大まで上昇!」 「速度……最大まで加速!」
咒文のたびに空気が震える。周囲の魔法陣は昼のように輝き、咆哮のように力の高まりを告げていた。
同時に、フィードとナイトが命を賭けて龍の背を駆け上がり、鋭い牙に覆われた巨口の上へと跳び移った。二人は咆哮を上げ、体の奥底から力を振り絞って、山のように重い上顎をこじ開けようとする。指の骨が砕け、筋肉が裂けようとも、その手を離すことはなかった。
エリーサは魔杖を振り、地中から巨大な蔓が蛇のように巻き上がる。それは龍の顎を絡め取り、さらに力を加えた。三人の力が一つとなったその時、奇跡が起きた――固く閉ざされていた龍の口が、わずかに、しかし確かに、震えながら開き始めたのだ。
空中では、エイトがその一瞬を見逃さず、龍の首筋へと飛び降りた。彼の手にある巨大な剣が眩い白光を放ち、戦場の空を切り裂くように再び掲げられる。その刃の先が向かうのは――あの血に染まった巨大な口の奥。
遥か遠く、城外にいるカスも、その懐かしい気配に気づいていた。
「なるほど……あいつらも、この都市にいたのか。」
彼は空を見上げ、口元に薄く笑みを浮かべながらも、顔には一切の不安の色がなかった。まるで、この戦いの結末はすでに彼の掌の中にあるかのようだった。
だが、その時――
「グオオオォォォ!!」
龍が激しくのたうち回り、幻術の鎖はついに完全に断ち切られた。シャーの幻像は空気中で砕け散り、彼自身は力尽きたように地面に倒れ、荒く息をつきながら、顔色は紙のように青白くなっていた。幻は崩れ、現実が戻る。怒りに満ちた巨龍は、今まさに拘束から抜け出そうとしていた!
「逃げ出すぞ!!」
その危機的な瞬間、残ったすべての戦士たちが命を顧みず突撃し、龍の山のような両足を押さえつける。歯を食いしばり、骨の砕ける音さえも咆哮に掻き消される中、後方の魔導士たちも迷うことなく、自らの残された魔力を全てサンディへと注ぎ込んだ。
「今よ……お願いっ!」
サンディの身体は万丈の光に包まれ、彼女の手に握られた大剣は烈火のような光を纏い、まるで世界の希望そのものをその刃に宿したかのようだった。迷いはなかった。彼女は両の目を大きく見開き、すでに開かれた龍の巨口に狙いを定め、怒声と共に剣を高く掲げる――
夜空を切り裂く剣の影が彗星のように落下し、烈しい風圧と燃え盛る火花を纏い、眩い尾を引いて蒼穹から一直線に落ちてくる!
この一撃――それは、皆の想い、力、そして決して折れない意志を結集した、最後にして唯一の希望だった。
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