第47話 11 竜の咆哮
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その頃、ニックスの側はすでに危機的な状況に陥っていたが、他の場所も同様に、いやそれ以上に過酷な戦場と化していた。暴走した竜はまるで破壊の化身。その一撃ごとに爪が空を裂き、吐息は大地を焼き尽くす。攻撃の届く範囲はすでに瓦礫と化し、あたり一帯は終焉の風景のようだった。
「これ以上、前に進ませるわけにはいかない!」ナイトが重々しく言い放つ。その表情は深い緊張に覆われていた。
「でも、一体どうすればいいんだよ……?」サンディが歯を食いしばって唸るように言う。声には絶望の色が混じっていた。「あらゆる攻撃手段はすでに試した。範囲攻撃も、集中砲火もまったく効果なし。あの鱗はまるで鋼鉄のように硬くて、それに……魔法耐性まで持っているみたいだ。」
「ニックスは……まだ戻ってきてないのか?」エイトが焦燥の面持ちで辺りを見渡す。「彼の力なら、あの鱗を貫けるはず……でもさっきの一撃だって、ニックスが出せる限界の力だった。それでも……あの竜にはまるで効いてなかった。」
「完璧すぎる……逆に絶望的だ。」ザックが呟く。「でもな、この世界に“完璧”なんてものは存在しない。どんな魔法にも、必ずそれを打ち破る方法がある。倒すには……内側から崩すしかない。実は、ひとつ思いついたことがあるんだ。」
仲間たちは息を呑み、すぐにザックの周囲に集まって耳を傾けた。
「この作戦、成功の可能性は高いと思う。」シャーが鋭く判断し、力強く言った。「それに、もう時間がない……ニックスを待っている暇もない。今すぐ、実行しなければ――」
その時だった。
突如として、異様な轟音が空気を裂いた。
次の瞬間――
窓の外、巨大な影が静かに近づいてきていた。深紅の瞳孔が地獄の門のようにゆっくりと開かれ、中にいる彼らを冷酷に見つめていた。
「……マズい!」
竜はすでに獲物を見つけていた。目が細められた刹那、怒涛のごとく風が巻き起こり、怒り狂った咆哮と共に灼熱のブレスが襲いかかる!
轟音と共に、隠れていた建物は一瞬で粉々に吹き飛び、土煙と炎が天へと舞い上がる。大地が震え、空が揺らぐほどの衝撃。
天を衝くような竜の咆哮が響き渡った。耳をつんざくその音は、まるでこれから始まる狩りの序章を告げるかのようだった。
戦いは――再び、苛烈な幕を開けたのだった。
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