第46話 16 《騎士たちの交響曲》
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ナイトはその見慣れた影を見つけた――それはフィードだった。驚きと喜びが入り混じった声で彼は呟く。
「君たち……戻ってきたのか。信じられないな……!」
フィードは豪快に笑い、雷鳴のような声を響かせた。
「そうだよ、そうだよ!だって約束しただろ?それにナイト師匠、今はちょっとピンチみたいじゃないか?でも、君の実力ならこれくらい、大したことじゃないよな?」
ナイトは深く息を吸い込み、静かに立ち上がると、身体に積もった埃を払った。傷だらけの鎧が軋む音が響く。
「確かに、本気で魔力を解放すれば倒せるだろう。でも問題は、そのあとだ。魔物たちは波のように何度も襲ってくる……もし今、魔力を使い果たしてしまえば、後が続かない。援軍が来なかったら、その時こそ本当に終わりだ。」
ナイトは真剣な眼差しでフィードを見る。
「……だから、少しだけ力を貸してくれ。」
「もちろんだとも!」
フィードは力強く頷き、目を輝かせた。
その瞬間、牛魔が再び咆哮とともに突撃してくる。フィードは地を蹴って前に出て、巨大な角を掴み取ると、渾身の力で牛魔を大地に叩きつけた。衝撃で地面が砕け、土煙が舞い上がる。ナイトは即座に背後に回り込み、フィードを狙った魔物の一撃を大剣で切り裂いた。
「……一つ考えがある。」ナイトは低く呟いた。
「すべての魔物を一瞬で消し去る方法だ。しかも魔力の消耗も最小限で済む……試してみるか?」
「もちろん!」
フィードは笑みを浮かべながら答える。
二人は肩を並べて立ち、戦意が炎のように全身から立ち上る。ナイトは大剣を高く掲げ、その刀身は白銀の光で眩く輝き出した。フィードは右拳を構え、腕に巻き付くように高速の震動エネルギーが走り出す。
「――超震蕩!!」
フィードの拳がナイトの大剣に叩きつけられた瞬間、震動の波動が剣を伝って拡散し、全方位に向かって放たれた。白い衝撃波が戦場を包み込み、牛魔たちはその震える光に飲み込まれ、跡形もなく塵と化していった。
ただ一体、最強の牛魔だけが、傷だらけの身体を引きずりながら立ち上がった。砕け散った鎧、呼吸すら荒く、それでも――その眼には炎が宿っていた。
それは、まるで彼ら二人が何度も繰り返してきた激突の再現だった。
ナイトは大剣を前に構え、一歩も退かずに立ちはだかる。
「……また俺が受け止めたか。でも、今回は――違う。」
「俺は、もう一人じゃない。」
その言葉とともに、フィードがナイトの隣に現れる。彼は右足を高く振り上げ、落雷のごとく振り下ろした。
ズドン――!
最後の牛魔は、轟音とともに大地へと沈んだ。
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