第46話 15 「さあ、月の光の下で一緒に舞おう!」
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完璧な反撃が、四方八方からの攻撃をすべて打ち砕いた。
エイトは不意に後ろを振り返った。そこに立っていたのは、黒いロングコートを羽織り、栗色の髪を風に揺らす人物。
その姿を見た瞬間、艾特の顔に安堵と喜びが混ざった笑みがこぼれた。
「……戻ってきたんだね。まさか、こんなに早く再会できるなんて思わなかったよ。」
ニックスは肩の力を抜きつつも、自信に満ちた笑みを浮かべて言った。
「どうして戻ってきたの?」
エイトが一歩前に出て問いかけると、ニクスの全身から紫色の気焔が燃え上がり、その頭上には徐々に王冠が形作られていく。
“王のモード”が、再び目覚める――。
ふたりは背中を預け合い、四方の敵に鋭い視線を走らせた。
「組織で状況を把握していたんだ。帰り道に魔物の痕跡が多く残っていたし、夜空に王都から立ち昇る煙も見えた。
幸運にも今日はそれほど遠くまで行ってなかったから、すぐに戻ってこられた。じゃなきゃ……君は危なかったかもしれない。」
「ふふっ、私を甘く見ないでよね。私は――あなたの師匠なんだから。」
艾特の口元には、凛とした笑みが浮かぶ。
その額の上にも、王冠がゆっくりと現れ始め、彼女の周囲には柔らかな白い粒子が舞いはじめた。それはまるで月光に包まれた精霊のようだった。
同じ頃、他の戦線にも新たな希望が差し込む。
ニックスの言葉通り、仲間たちも支援に駆けつけていた。
猛牛の如きミノタウロスの角を、誰かが突然がっしりと掴み、そのままの勢いで宙へと放り投げた。
そして一閃の跳躍と共に、ナイトのすぐ隣に降り立つ。
桑迪のもとにも、ふいに現れた腕が彼女の体を優しく抱き寄せる。
「やっと見つけたわ!」
エリーサが嬉しそうに微笑んだ。
一方、ザックのまわりに群がっていた骸骨たちは一瞬にして砕け散る。
「さっきから誰かが来てる気配はあったんだ。……やっぱりシャーだったのか。」
――ここからが逆転の始まりだ。
ニックスの身体には、再び紫の魔力で編まれた武士の鎧が纏われていく。
空気が震えるほどの魔力が、その身から溢れ出す。
「円舞曲!」
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