第46話 14 「この瞬間こそが、騎士としての意味だ。」
戦場のもう一角で、ナイトは再び立ち上がった。塵と傷にまみれた体を支えながらも、その瞳には決して消えない決意の光が宿っていた。
「俺は、何度倒れても、何度でも立ち上がる。」
魔物は冷たい笑みを浮かべ、低く嗤った。
「立ち上がったところでどうなる? 俺たちの最強戦力はまだ現れていない。お前がどれだけ強くても、これを倒せても……次がある。その次も。そのまた次も。そして、お前の援軍は? 奴らが来た時には、この街は既に灰となっているだろうよ。」
ナイトは深く息を吸い、大剣を握り直した。
「正直に言おう。今日は本当に疲れた。夜襲なんて、おかげで今はもうクタクタだ。でもな……この街の人々は、全員安全に撤退させる。それができるかどうかじゃない。それを信じて、俺たちは立っている。例え俺がその安全の中に入れなかったとしても……」
彼の声が力強く響いた。
「それでも、俺は守る。守れる命を、守れる場所を。今日を生き延びて、家族や友人の元へ帰らせる。それだけでいい。それだけが、俺たち騎士の意味だ。それを思えば……もう、血が滾るんだよ。だからさ――かかってこい。何度でも、俺はここでお前たちを止めてやる!」
同じ頃、他の三人もまた、極限の危機に直面していた。
エイトは瓦礫の中から、擦り傷だらけの身体を震わせて立ち上がった。煤と血の匂いが漂う空気を吸い、強い光を宿した瞳で前を見据える。
「今の私は、絶対に負けられない……だって、私たちは――この街の騎士だから。」
その言葉は、ある「バカ」が彼女に教えてくれたものだった。
他の二人も、心の奥で同じ思いを抱いていた。
『俺たちは、ここで魔物を止める!』
ゴブリンヒーローが咆哮を上げ、再びエイトに向かって突進してきた。避ける余地はない。エイトは覚悟を決め、心の中で呟いた。
「今回は……受け止めるしかない。半月を使えば、反撃の糸口が掴めるかもしれない。」
彼女は月光を浴びて輝く刀を構えた――だがその瞬間、周囲の魔物が弓を引き、背後から矢の嵐が襲いかかってきた。半月の反撃範囲を大きく超える角度だった。
「……どうすれば……!」
その刹那、誰かが彼女の背後に現れた。
二つの異なる、けれど力強く響き合う声が重なる。
「半月!」
星を裂くような閃光の剣気が、四方から迫る矢を全て弾き飛ばす。
「どうやら、ちょうどいいタイミングだったみたいだな。」