第46話 12 崩壊の夜
戦場は再びエイトの元へと戻った。
彼女はまるで雷光に舞う影のように、俊敏でしなやかな動きで閃光の隙間をすり抜ける。空気を引き裂くように走る稲妻が腹部をかすめたその瞬間、エイトは宙へと飛び上がり、落下の勢いを利用して小刀を振るった——しかし、その鋭い一撃もなお、ゴブリン・ヒーローの頑強な身体には傷ひとつ与えられなかった。
ゴブリンが振りかざす巨大な大剣は、雷鳴を伴って稲妻を纏い、その軌道は予測不能な混沌。エイトは空中で身体をひねり、驚異的な身のこなしで再び地面に着地する。
だが、脅威は目の前の敵一人にとどまらなかった。夜空から次々と降り注ぐ魔物たち。エイトは既に手一杯で、ゴブリン・ヒーローを前にしながら、後方から迫る魔物の攻撃にも対応しなければならなかった。鋭い矢が風を裂き、彼女の横を掠める。
「円月!」
彼女の小刀が放つ剣気が弧を描いて広がり、周囲の魔物を吹き飛ばす。その刹那、再び雷光が前方から襲いかかる。エイトは両腕に小刀を構え、上から下へと力強く振り下ろし、雷を切り裂いた。
だがそのとき、死角から飛来した魔法が彼女の足首を貫いた。眩い紫の光が一瞬で彼女のバランスを崩し、ゴブリン・ヒーローはその隙を逃さなかった。掌に集めた雷撃を地を這わせて放ち、アイトに向けて突進する。
彼女は両腕を胸の前に交差させ、防御の構えをとるも——次の瞬間、稲妻に打たれ、背後の建物へと吹き飛ばされた。壁が砕け、瓦礫が飛び散り、煙と塵が辺りに立ち込める。空気は焦げた匂いと硝煙に満ちていた。
——この戦況、決して楽観視できるものではなかった。
その頃、ナイトもまた苦戦していた。
幾度となく突進を繰り返すミノタウロス。ナイトは盾でそれを受け止め続けるが、脚はすでに震え始めていた。対するミノタウロスは士気が高まり、闘志を燃やしていた。咆哮と共に、さらなる仲間を呼び寄せる。
ナイトは焦りを感じ始める。多方面からの連続攻撃により、防御は追いつかず、反撃の隙もない。巨角が彼の身体を直撃する——たとえ他の牛魔がそこまで強くなくとも、数の暴力は彼の行動を封じていた。
重厚な鎧をまとったミノタウロスが地を蹴る。左脚をしきりに動かし、突撃の準備を整える。瞬間、背後を狙い跳びかかる——!
ナイトの身体は空中へと放り出され、そのまま重力に引かれて大地へと激突。鈍く響く衝撃音が、戦場の緊迫をさらに際立たせた。