第45話 16 「王都の前夜」
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すべての出来事がついに終息を迎えた。ニックスは一連の経緯を丁寧に説明し、温泉旅行にまつわるすべてが正式に幕を閉じた。しかし、この短い旅の終わりと同時に、より壮大な舞台——王都会議がついに幕を開けた。
数人は旅立ち、馴染み深く荘厳な王都へと戻った。城門は依然として高くそびえ、王宮の尖塔は朝の光の中で煌めいていたが、彼らの心には、未だ晴れぬ薄霧がかかっているようだった。
「本来なら、この温泉旅行で少しはリラックスできると思ってたんだけどね。」ナイトは沈みゆく空を見上げ、疲れと皮肉が混じった口調で言った。「まさか、精神的にもっと張り詰めることになるとはね。」
彼は笑いながらニックスの肩を軽く叩いた。「でも、今夜はしっかり休もう。明日は、あの口達者な貴族たちと対峙するために、万全の状態で臨まないとね。」
「確かに、そうだね。」ニックスは微笑みながら頷いたが、その声には一抹の思いが隠されていた。「じゃあ……また明日。」
夜が深まり、王都は月光に包まれて静寂を取り戻していった。ただ、ニックスの心だけは、未だに落ち着きを取り戻せずにいた。
彼は部屋のベッドに腰を下ろし、窓の外に目を向けた。静かな夜の景色が目に映るが、眠気は一向に訪れなかった。
「明日の王都会議……このままじゃ眠れないな。」彼は独り言のように呟き、ため息をついた。「どうせ眠れないなら……この機会に少し練習でもしようか。」
彼は足を組んで座り、体を壁に預けて目を閉じ、体内に宿る共生者——あの幽霊のような存在を呼び起こした。
「幽霊、以前言ってたよね。君が完全に僕の体を支配すると、力は強大だけど、自由に制御できないって。じゃあ……僕たちがそれぞれ半分ずつ制御すればどうかな?君が半分、僕が半分。そうすれば、本当の限界の力を引き出せるかもしれないし、バランスも保てると思うんだ。」
彼の声は落ち着いて真剣で、まるで提案のようであり、同時に願いのようでもあった。
幽霊は一瞬沈黙し、そして首を横に振った。
「まだそんなことを言ってるのか……」その声は相変わらず冷たかった。「本当にできると思うなら、やってみればいいさ。僕には止められないんだろう?」
「もっと広い場所に行こう。」ニックスは立ち上がり、目に決意を宿した。「この部屋は狭すぎて、練習には向かない。」
彼はドアの前に立ち、振り返りながら、何気なく、しかし意味深に言った。
「最近、君の僕に対する態度が少し変わったような気がするんだ。」
幽霊は冷笑し、いつもの傲慢な口調の中に、微かな揺らぎを含ませて言った。
「気のせいだよ。僕はずっと、君のことを変わらない、煩わしい奴だと思ってる。ただ……今はもう慣れただけさ。」
ニックスは静かに笑い、何も言わずに部屋を後にした。
しかし、彼は気づかなかった——彼が去った後、細い影が静かに角から現れ、星が彼の背中を見つめながら、音もなく後を追っていたことに。
ニックスは静まり返った街の小道を抜け、最終的に広々とした中庭にたどり着いた。月光が青石の地面に降り注ぎ、周囲には誰の姿もなく、ただ夜風が木の梢を撫で、低く囁くような音を立てていた。
彼は深く息を吸い込み、背後に漂う幽霊のような存在に向き直り、低く、しかしはっきりとした声で言った。
「ここだ——さあ、練習を始めよう。」
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