第45話 14 「私たちはきっとまた再会するだろう」
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サムランはニックスを見つけ、彼を都市の片隅にある小さな小屋へと案内した。 そこは、今、小さな男の子が一時的に身を寄せている場所だった。 朝の霧がまだ完全には晴れず、斑に光る石壁に朝日が斜めに差し込み、目立たないこの住まいに淡い光のベールをかけていた。
「ここだよ、ニックス君。」 サムランは扉の前で立ち止まり、穏やかな声で言ったが、その声には微かな慎重さが滲んでいた。 「あの小さな男の子が中にいる。これからのことは君に任せるよ。私はこれで失礼する。」
そう言って、サムランは静かに背を向け、立ち去ろうとした。
「……待ってくれ。」
ニックスの声が背後から響いた。 その声は静かだったが、否応なく強い意志を感じさせた。 彼は閉ざされた扉を見つめ、その瞳には複雑な感情が浮かんでいた。
「君が中に入る方がいいと思う。結局、この計画は君が考え、君が実行したものだ。私はただ、少し協力しただけに過ぎない。」
サムランは足を止め、振り返って、困ったような、それでいて優しい微笑みを浮かべた。
「私が入れば、あの子の感情は……おそらく完全に崩れてしまうだろう。」 彼は室内の方向を見つめ、慎重な憂慮を込めて言った。 「不確定要素が多すぎる——それは私の望む結果ではない。君こそが最適な人選だ、ニックス君。」
ニックスはゆっくりと首を振り、その声は低く、しかし反論の余地を与えなかった。
「いや、私は……あの子に、誰が本当に彼を助けたのかを直接見せたい。」
彼は静かにため息をつき、その眼差しは少し柔らかくなった。
「それに、彼には『ありがとう』と言う機会が必要だし、この瞬間に、誤解を解くチャンスも与えたい。」
サムランは彼をじっと見つめ、一瞬の沈黙の後、あきらめたように微笑んだ。
「……君には敵わないな。」
彼はニックスの肩を軽く叩き、扉の方へと歩み寄った。
「じゃあ、ちょっと行ってくるよ。」
扉が開かれ、柔らかな光が床に差し込んだ。 サムランが部屋に入った瞬間、小さな男の子の顔色が一変した——それは、隠しようのない嫌悪と拒絶の表情であり、抑え込まれていた感情が一気に噴き出したかのようだった。
「話しかけないで。」 彼の声は氷のように冷たく、目には涙が浮かんでいたが、その瞳は頑なだった。 「君の声なんて聞きたくない。」
サムランは静かに立ち尽くし、心の中ではこの反応を予想していた。 彼は驚くこともなく、ただ心の中で静かにため息をついた。
——やはり、完全に嫌われてしまったか。
彼はゆっくりと懐から透明な水晶球を取り出した。 その球体の中には淡い光が流れ、見慣れた姿がぼんやりと浮かんでいた。
「君を怒らせるために来たわけじゃない。」 サムランの声はいつも通り冷静だった。 「むしろ、その逆だ。君に人を返しに来たんだ。」
男の子は驚き、目を大きく見開いた。 次の瞬間、彼は素早く前に出て、水晶球を奪い取った。 その手の動きは迅速だったが、触れ方は非常に優しかった。
「彼女に……何をしたんだ!?」
サムランは両手を広げ、穏やかな口調で、何も隠すつもりがないことを示した。
「この球体の元々の用途は、魔力神経が限界に達しそうな冒険者たちを助けるためのものだった。」 彼は男の子が抱える球体を見つめ、その瞳には捉えどころのない深い意味が宿っていた。 「魔物を封印し、持ち主の魔力神経と融合させることで、戦闘力を高める——多くの冒険者がそうしている。」
彼は一瞬言葉を止め、意味深な微笑みを浮かべた。
「例えば、ニックス君。彼の体内には今、幽霊が宿っている。」
「そして私は——この球体に少し手を加えただけだ。今のそれは、ただの一時的な容器に過ぎない。」
彼はゆっくりと男の子を見つめ、その眼差しは穏やかで、誠実だった。
「君がそれを壊せば、セレナは自由になる。もう彼女を連れて行ってもいいんだ。」
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