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第45話 09 幽剣の残光


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まさか、本体と見紛うほどの幻影を二体も創り出せるとは……。 しかも、それぞれの攻撃が実体を持ち、確かな殺傷力を備えている。 サムランは目を細め、口元に皮肉めいた笑みを浮かべた。


「さすがだね、ニックス君。」


彼は低く呟いた。 その声には、わずかに感嘆の色が滲んでいたが、すぐに自信と余裕がそれを覆い隠した。


「でもね……こんな小手先の技、僕には通じないよ。」


彼は動かず、背を向けたまま、ただ視線だけを後方に向けた。 その瞬間、彼はすべてを見通したかのようだった。


次の瞬間、サムランを中心に、目に見えない気流が爆発的に広がり、まるで逆巻く波紋のように空気を震わせ、三体のニックスを同時に弾き飛ばした。


続けて、彼の足取りは音符のように軽やかに地面を踏みしめ、瞬く間に本物のニクスの前に現れた。


その指先が、まるで羽毛で触れるかのように、ニックスの胸元にそっと触れた。


見た目には何の変化もないように思えたが、ニックスは胸元から全身にかけて、雷鳴のような衝撃が走るのを感じた。 それは体内で炸裂する深海の重錘のようであり、彼の神経系を侵食する呪印のようでもあった。


ニックスは喉を詰まらせ、足元がぐらつき、膝をつきそうになったが、剣の柄を地面に突き立てて、何とか体勢を保った。


彼の頭の中は真っ白になり、驚愕と困惑が交錯していた。


「……どうして? 彼はどうやって見破ったんだ? それに、この速度……。確かに実力差はあると分かっていたけど、ここまでとは……。」


しかし、彼は退くことなく、深く息を吸い込み、目を鋭く光らせた。


「……でも、彼が幽霊剣士の能力を完全に理解しているとは思えない。」


彼の口元には、挑戦的な笑みが浮かんだ。


「何せ、僕はこの世界で唯一の幽霊剣士だからね。」


サムランが前に出たその隙を突いて、ニックスは再び攻撃を仕掛けた。


「円舞曲!」


剣の光が流星のように交差し、瞬く間に優雅で致命的な円環を形成した。 しかし、サムランは慌てることなく、軽く一蹴りするだけで、その攻撃を再び無効化した。


だが、これこそがニックスの狙いだった。


「今だ……!」


彼の体が煙のように揺らめき、徐々に透明になっていき、サムランの体をすり抜けて背後に現れた。


この一撃は、確実に命中する!


ニックスは心の中で叫び、剣を振り下ろした。 しかし、手応えは予想外のものだった。


刃が触れたのは、血肉ではなく、まるで石のように硬い何かだった。


サムランの腕は無傷であり、瞬時に蜥蜴の鱗のような硬質な鱗片が浮かび上がり、紫黒色の光沢を放っていた。


次の瞬間、鱗片は風に吹かれた砂のように消え去り、彼の冷静で淡々とした表情が再び現れた。



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