第45話 05 「顕現せよ」
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「市民の皆さん、ご安心ください!」
仮設された拡声装置の前に立つ兵士が、落ち着いたが力強い声で、群衆の中に広がる不安の波を抑えようと語りかけた。
「ここで事故などは一切発生しておりません。我々はある夢魔がこの付近に潜んでいるとの情報を受け、調査にあたっているだけです……すぐに終了しますので、皆さんは日常の生活にお戻りいただけます。」
彼の言葉は、街頭に広がり始めた騒ぎを薄い霧のように覆い隠そうとしていた。
群衆の中には、怯えた様子で周囲を見回す者もいれば、平然としながらも耳をそばだてる者もいた。そして低い声で噂し合いながら、視線を静まり返ったホテルに向ける者もいた。
「夢魔?あのホテルにいるってことか?」
——そんな微妙に張り詰めた空気が、通りの一角を包み込んでいた。
そのとき、堂々とした足取りでサムロングが現れた。姿勢は凛としており、その落ち着いた雰囲気は周囲に威厳を与える。彼の視線が走ると、すぐに一人の人物に留まる——そこに立っていたのはニックスだった。
サムランの顔に親しげな笑みが浮かび、すぐに歩み寄る。声には懐かしさと温かみがあふれていた。
「おや、これはニクス君じゃないか。それにナイト先輩、サンディ先輩まで!懐かしい顔ぶれがそろってるね。」
しかし彼は一拍置いて、表情を引き締めた。
「……残念だけど、今は旧交を温める時じゃない。この件が片付いたら、改めてゆっくり話そう。」
「了解です。」ナイトは落ち着いた表情で頷いた。
「そんなに丁寧にしなくていいから、さっさとやることやってよ。」
エイトが無造作に割り込むように言い、手には分厚い漫画本を抱えていた。「せっかく集中して読んでたのに、あんたのおかげで台無しだわ。」
「先輩は相変わらずせっかちですね……」
サムランは苦笑しながらも、礼儀正しい態度を崩さず、そのまま前へ進もうとした。
しかし、その前にニックスが一歩進み出て、行く手を遮った。
「お待ちください。」
その声は落ち着いていたが、どこか切迫した響きがあった。
「どうして夢魔がここにいると断定したんですか?まさか……あのライオンが根拠ですか?それはきっと誤解です。あれは僕たちの仲間、シャー……」
サムランの笑顔は一切崩れなかった。
口調も穏やかで、すべてが計算ずくのようだった。
「言いたいことは分かってるよ、ニックス君。でも……誤解ではないんだ。」
彼は横にいる純白のライオンに一瞥をくれ、そのまま冷ややかな口調で続けた。
「詳しい原理はあとで説明するけど、今はその時じゃない。彼女は、この近くにいる。うちの仲間、つまりこのライオンが、今は異常なほどに警戒しているからね。」
ニックスがなおも反論しようとするその一瞬、サムランはその目を見逃さなかった。
「ニックス君……何か隠してるんじゃないか?なぜそんなに、調査を止めようとする?君は……何かを知っているな?」
彼は一歩近づき、その声は冷たい刃のように鋭くなった。
「ずっと気になっていたんだ。君の仲間がなぜ魔物の姿を維持しているのか……しかも、手には明らかに結界が展開されている。」
サムランは片手を挙げ、五指を広げる。その掌には魔力が渦を巻き、まるで夜を破る黎明の光のようだった。
「それなら……ちょっと見せてもらおうか。」
彼は静かに言い、唇に微かな笑みを浮かべた。
「僕の推測が、当たっているかどうかをね。」
「顕現せよ!」
その号令と共に空気が裂けるような振動が走り、魔法の結界に隠されていた光景が一気に露わになった。隠されていたセレナ、少年、そして彼らの気配——すべてが白日の下に晒されたのだった。
「ね、当たってたでしょ、ニックス君?」
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