第45話 03 「眠りの肉と白獅子」
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これを聞いた瞬間、皆の表情が一変した。先ほどまでの和やかな空気は一気に消え去り、全員の視線が鋭く、真剣さを帯びていく。
「さあ、言ってみろ。いったいどんな計画なんだ?」
視線は一斉にエリーサへと集まった。その瞬間、空気が凍りついたかのように静まり返り、聞こえるのは壁の時計の針が時を刻む音だけ。
エリーサは背筋を伸ばし、真剣そのものの表情で、瞳には自信の光が宿っていた。
「大きくてジューシーで、めちゃくちゃ美味しそうなお肉を買ってきてね、そこに催眠薬をこれでもかってくらい詰め込むの!」彼女は大げさな身振りを交えながら言った。「そしたらライオンはそれを食べて、あっという間に子猫みたいにぐっすり眠っちゃうの!戦わなくてもいいし、完璧じゃない?」
自信満々なその声には、自分の機転で皆を感心させる未来がはっきりと見えているかのようだった。
しかし——
「ふざけんなよ!!」
三人はほぼ同時に立ち上がり、怒りと呆れの入り混じった顔で叫んだ。その声は今にも天井を突き破りそうな勢いだった。
——その頃。
サムランは館の別の一角、庭に面したベンチに腰掛けて、手元の記録帳を静かにめくっていた。朝のわずかな静寂を楽しんでいたその時、昨日慰問品を届けた兵士が足早に近づいてきた。手には大きな食事用の箱が抱えられている。
「サムラン様、そろそろお時間です。ライオンの食事の時間です。」
その言葉と同時に、真っ白な巨大なライオンが音もなく現れ、しなやかな足取りでサムロンの足元に優雅に横たわった。その毛並みは朝日に照らされて柔らかく光り、威厳と親愛が共存していた。
「サムラン様とこのライオン、本当に仲が良いんですね……」兵士は感心したように言いながら、丁寧に食事を差し出した。
サムランは穏やかに頷き、優しい目でその相棒を見下ろした。
「そうだ。小さい頃に拾って以来、ずっと一緒にいる。最も信頼できる相棒のひとりだよ。」
そのとき、ライオンが低く吠えた。その声は重く、空気を震わせるほどの迫力があった。
「おっと、すまない。餌をやるのを忘れていたな。」
サムランは苦笑しつつ、急いで食事の準備を始めた。
その様子を見ていた兵士の表情がふと曇った。何かを思い出したように口を開く。
「そういえば……昨夜は本当に焦りました。夢魔を見つけたと思ってしまって……結果はただの誤解でしたが。」
頭をかきながら、昨夜の出来事を思い返すように言う。
「昨夜の騒ぎのことか?」サムランは眉をひそめ、声を低くした。
「はい。あのライオンが突然吠えだして、危険な魔物を見つけたのかと思って急いで駆けつけたんですが——そこにいたのはニクス様の仲間でして。サムロン様と同じ能力を使える方でした。それでライオンが一時的に混乱したようです。」
彼は少し間を置き、補足するように言った。
「おそらく、サムラン様が能力を使うときは、魔物のような変化が起きないから……ライオンも警戒しないんでしょうね。」
その言葉を聞いたサムロンの表情が、静かに、しかし明らかに変わった。目の奥に浮かんだのは、隠しようのない衝撃。
「今……なんて言った?」
彼は立ち上がり、声に焦りと切迫した色が滲んだ。いつもの冷静さは見る影もなく、本能に突き動かされるように足を踏み出す。
「急げ、私と一緒に来い——ニックス君が泊まっている場所に戻るんだ。」
彼の声に応えるように、白いライオンもすぐに立ち上がった。その瞳には、主の緊張を読み取ったような鋭い光が宿っていた。
「……あのライオンは、夢魔の気配を感じ取っていたんだ。」
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