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第45話 02 エリーサの超完璧作戦



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翌朝、冷たい朝の光が窓枠をすり抜け、部屋の中に差し込んでいた。木漏れ日のように斑に揺れる光と影が、床の上を静かに這っていく。

ニックスが目を開けた瞬間、昨夜の出来事が脳裏を断片のように何度もよぎった。緊張の余韻はまだ完全には消え去っておらず、まるで胸の奥に潜んだ冷気が、呼吸のたびにそっと囁いてくるかのようだった。


彼はすぐに服を着替え、無駄のない動きで身支度を整えたが、その視線は自然と窓の外へと向かっていた。

今、最も優先すべきは──誰にも疑われずに、あの少年をこの監視と疑念に満ちた館から無事に連れ出すこと。理屈の上では難しくはない。だが、あの獅子の存在を思い出しただけで、計画の一歩一歩がまるで刃の上を歩くように思えてくる。


やがて一行はふたたびリビングに集まり、テーブルを囲んだ。それぞれの表情には緊張と不安が滲み、厚いカーテン越しの朝日が辛うじて部屋の隅々を照らす中、空気の中を緊張が霧のように漂っていた。


最初に口を開いたのはセレナだった。

まるでちょっとした散歩でも提案するように、軽やかな口調で言う。


「私がその子を連れて、普通に外に出ればいいじゃない?私の見た目は人間と変わらないし、もし気になるならマントを羽織れば、誰にも気づかれないわよ。」


そう言って、マントを広げる仕草を軽く見せながら、当然のように微笑んだ。


だが、ニックスはそっと首を横に振った。その表情には、慎重さと緊張が滲んでいた。


「駄目だ。昨日得た情報によれば……やつらは“雪獅子”を使って、周囲の魔物の気配を感知できるらしい。ただ出て行くだけでは、高い確率で途中で止められることになる。」


その言葉が終わらぬうちに、エリーサが勢いよく手を挙げた。背筋をぴんと伸ばし、目を輝かせて堂々と言い放つ。


「私には完璧で、無敵で、絶対にバレない計画があるの!」


あまりにも自信満々なその言い方に、一同の視線が自然と彼女に集中する。


フィードとニックス、そしてシャは顔を見合わせ、まるで「世界を救う」と言い出した子どもを見るような複雑な表情を浮かべた。


「本気か?」と最初に声を発したのはフィードだった。疑念の色が露骨ににじんでいる。


「なによ、その目!私、ちゃんと考えたんだから!しかも、すっごくいい案だったのに!なんでみんなそんなに疑うのよ!?フィード、あんたまで疑うの!?私たち“バカ組”の仲間じゃなかったの!?仲間を裏切るなんてひどい!」


「……“バカ組”って、なんだその変な名前は?」

フィードは思わず吹き出しながらツッコんだ。


「はいはい、話を逸らさないの!」

エリーサはテーブルをパシンと叩き、真剣な表情で言った。

「私はね、この計画を考えてて、昨日一晩中ずっと寝られなかったの!」


するとシャーが割り込むように口を挟む。冷静な顔で、少し呆れたように姉を見つめながら言った。


「どうりで昨夜、隣の部屋からずっと独り言が聞こえてたわけだ。姉さん、とうとう頭おかしくなったかと思ったよ……いや、もともとその気はあったけど。」


「こらっ!」エリーサは眉を吊り上げて弟を睨みつけた。


「……もう、茶化すのはやめて。」

彼女は深く息を吸い、鋭い眼差しで全員を見渡す。

「私は、本気なのよ。」



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