第44話 09 『空白の心』
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少年はついに、再び彼女――セレナと出会った。
その瞬間、空気さえも凍りついたかのようだった。彼は彼女の前に立ち、漆黒の瞳に映るのは、懐かしくも遠い彼女の顔。
「やっと……また会えたね。」少年は静かに呟いた。その声には、長い旅路の果てにたどり着いた安堵が滲んでいた。
セレナは微かに眉をひそめ、複雑な感情がその瞳をかすめた。
「こんな大掛かりなことをして……ただ話すためだけ?」彼女の声には苛立ちが混じっていたが、どこかしら後ろめたさも感じられた。「何を言いたいの?前にも言ったはずよ……あなたの望むものは、私には与えられないって。」
彼女の声は低く、言葉は急ぎ足で、まるで心の奥底に触れるのを恐れているかのようだった。
「死……私にはわからない。なぜあなたを殺せないのかも、理解したくない。」彼女は彼の視線を避け、低く付け加えた。「とにかく、私はあなたを殺さない。」
彼女の視線は彷徨い、彼と目を合わせようとせず、自身の感情さえも制御できないようだった。
「わかってるよ。」少年は静かに応えた。彼は問い詰めることも、怒ることもなかった。「ここに来たのは、君に殺してほしいからじゃない。ただ……頭の中がぐちゃぐちゃで。君とちゃんと話さないと、心の中の絡まったものが解けない気がして。」
彼は顔を上げ、夜の闇の中でその瞳はひときわ澄んでいた。
「あの出来事以来、こんなにも心が乱れたことはなかった。でも、あの一週間……本当にあっという間で、楽しかった。」彼の声は柔らかく、遠い夢のような温もりを思い出しているようだった。「君も、そう感じてたんじゃない?」
セレナは言葉を発さず、ただ小さく頷いた。しばらくして、彼女の声が低く響いた。
「うん……あんなに楽しかったことは、今までなかった。」
彼女はまつげを伏せ、その目尻にはあの時の光景がまだ残っているかのようだった。
「自分の本当にやりたいことができる……あの自由さ、あの単純な幸せ。」彼女は静かにため息をつき、その声には少しの苦味が含まれていた。「でもね、私たち二人ともわかってる。もう、あなたのそばにはいられないって。」
風が二人の髪を撫で、月の光が彼女の頬を照らし、隠しきれない寂しさを映し出していた。
「私があなたに近づいたのは……最初から、あなたを苦しめられると思ったから。あなたを殺せると思ったから。だから私は……」
彼女の言葉が終わる前に、少年が静かに口を開いた。
「確かに、そうだったね。」彼は微笑んだが、その笑みには言いようのない寂しさが滲んでいた。「でも、途中から……何かが変わった気がする。」
彼はまぶたを伏せ、突然湧き上がった感情を隠すようだった。
「君がいなくなってから、心にぽっかりと穴が開いたようで……寂しかった。」彼の声は風の中の囁きのようだった。「なぜこんな気持ちになるのか、自分でもわからない。ただ、一人でいると、とても静かで……」
彼は彼女を見つめ、その瞳には非難の色はなく、ただ隠しきれない本音があった。
「たぶん、君と一緒にいた時間が、本当に楽しかったからだと思う。あの……やっと誰かと一緒にいられるっていう感覚。」
彼の声は次第に震えを帯びていった。「夜のプールでふざけ合ったり




