第44話 06 「私たちはきっとまた再会する。」
---
もともと雲のように漂っていた夢の世界が、ある瞬間、まるで見えない手によって空間ごと打ち止められたかのように、時と空間が凍りついた。空気には不自然な波紋が広がり、それはまるで静かに水面が裂けていくようだった。
セレナの身体がびくりと震え、彼女は素早く振り返った。圧倒的な魔力の威圧が容赦なく迫り来る気配——紫の魔力が荒れ狂う波のように空間を埋め尽くしていく。
その瞳に一瞬よぎったのは驚きではなかった。鋭い覚醒だった。
——罠だ。
その瞬間にすべてを悟ったセレナは、すぐに逃げ出そうとした。だが、足元の空間は既に閉ざされていた。見えない結界が四方八方に張り巡らされ、彼女の逃げ道を完全に封じ込めていたのだ。
そんな中、空気を切るように浮かび上がる静かな笑み。
「ふふっ。」
すぐ傍らに立つニックスの口元がわずかに上がり、彼の眼差しには確かな自信が宿っていた。
セレナの表情が引き締まり、両手を広げて魔力を解き放つ。魔力の蔓が空気を切り裂くように舞い上がり、彼女は低く呪文を唱えた。銀色の魔力が空間で渦を巻き、次の瞬間——魅了。
甘い香気が夜風に乗って広がっていく。それは陶酔の花の香りのようで、彼女はこれで目の前の敵を操れると確信していた。たとえ一瞬でも、それだけあれば逃げ切れる——
だが、
ニックスはびくともせず、その目はまったく揺るがなかった。彼は肩をすくめて手のひらを軽く広げ、どこか愉快そうに言った。
「悪いけどさ、精神操作系の魔法、僕には全然効かないんだよね。」
その瞬間、セレナの背後の空間がまるでカーテンのように裂け、奥深く黒い闇が口を開けた。そこから滲み出す冷たい闇は、現実世界への通路のようでもあった。
彼女が反応する間もなく、強大な力が彼女の全身を呑み込み、深淵へと引きずり込んでいく。
刹那の暗黒——
そして、星々の輝きが一気に視界へとなだれ込んでくる。広大で果てしない宇宙の中に漂っているような錯覚。星たちは静かに天に瞬き、そのすべてが、無言でこの瞬間を見つめていた。
再び目を開いたとき、そこはもう夢ではなかった。
現実の庭園。夜は静かに降り、穏やかな風が水面を撫でていた。星の光と灯火が池の水に反射し、揺れる波紋となって広がっていく。まるで夢の残り香がまだそこに漂っているかのようだった。
「セレナ、迎えに来たよ。」
耳元に響いたのは聞き覚えのある声。彼女がゆっくりと振り返ると、あの少年がそこに立っていた。澄んだ瞳に、揺るぎない意志を湛えて。
その頃、屋敷の中では、シャーの姿が既に恐ろしい変貌を遂げていた。彼の身体は半ば魔物と化し、奇妙な目がいくつも浮かび上がり、両手には淡く光る水晶の魔法球を抱えていた。
「シャー、めっちゃ変な姿になってる……正直、超キモい。」エリーサは顔をしかめて小声で呟いた。
「お姉ちゃん、うるさい。」星はため息交じりに横目で睨みながら言い放つ。「こんな姿、私だって好きでやってるわけじゃないよ。気づかれないようにするには、幻のシーンを作り出すしかなかったの。今、彼ら二人は私が構築した幻想空間の中にいるんだから。」
「本当に……計画は大成功だったね。」フィードがぽつりと呟く。その声にはまだ少しの信じられなさが混じっていた。
「僕が最初に眠って、ニックスがその後、僕の夢に接続して入ってきた。そしてシャは外から幻術を使って、彼女の逃走を阻止した。最後に、ニクスがセレナを夢から現実に引きずり戻して……」
「まさに、完璧な作戦だったよ。」
---




