第43話 04 《彷徨う星々》
「どう? 」
セレナはそっと首を傾げ、微笑を浮かべながら夜の街を見渡した。煌めく街の灯りが彼女の瞳に映り込み、まるで星空の欠片を宿しているかのようだった。
「ここからの景色、綺麗でしょ?」
少年は静かに高層ビルの端に立ち、眼下に広がる街並みを見下ろした。無数の灯りが交差し、まるで地上に降り注いだ星々のように、この繁華な都市を幻想的に彩っていた。夜風がそっと吹き抜け、心地よい冷たさが肌を撫でる。彼は微かに目を細め、この光景を記憶に深く刻み込もうとするかのようにじっと見つめた。
「……確かに、すごく綺麗だね。」
思わず漏れた言葉には、驚きの色が滲んでいた。
「なんだろう……この場所にいると、不思議と落ち着くんだ。」
しばしの沈黙の後、彼はセレナを見つめ、ふと疑問を口にした。
「ところで、どうして君はここからの景色が綺麗だって分かったの?」
セレナはくすりと笑い、夜空を見上げながら、どこか楽しげに肩をすくめる。
「うーん、分からない。ただの勘かな?」
彼女は瞳を輝かせながら言った。
「でもさ、空から世界を見下ろすのって、きっとすごく綺麗だと思わない?」
少年はその言葉に少し驚いたような顔をし、それから微笑んだ。彼女の直感を、なんとなく受け入れたくなったのかもしれない。
夜の風が穏やかに吹き抜け、二人は静かにこの瞬間を味わっていた。
***
「なあ……」
少年はぽつりと呟いた。
「ちょっと個人的なことを聞いてもいい?」
セレナは興味を持ったように眉を上げた。
「へぇ? 君が人に興味を持つなんて珍しいね?」
少年は彼女のからかいには反応せず、夜景を見つめながら静かに続けた。
「代わりに、僕も自分の秘密を一つ教えるよ。」
セレナはしばらく考え、それから肩をすくめて言った。
「いいよ。で、何が聞きたいの?」
少年は視線を落とし、しばし考え込むように沈黙する。
そして、静かに口を開いた。
「……君は、以前どんな生活をしていたの?」
彼は続ける。
「君はこの世界のことをあまり知らないみたいなのに、なぜか基本的な知識は持っている。それは誰かに教わったものなの? それとも……?」
セレナは目を丸くし、それから少し笑って空を見上げた。
「……なかなか鋭い質問するね。」
夜空の星を眺めながら、彼女の瞳にかすかな寂しさが宿る。
「……大した話じゃないよ。退屈で、つまらない。」
彼女はそっと息を吐き、肩を落とした。
「それに、正直、自分がなぜ生き続けているのかもよく分からない。ただ……生きているだけ。」




