第43話 01 感謝には及ばない
夜のプールパーティは深夜まで続き、煌めくライトが波の上に反射し、色とりどりの光の帯が水面を飾る。空気にはアルコールと果物が混じった微かな甘い香りが漂い、人々の笑い声や音楽が交錯し、まるで終わりのないお祭りのようにこの世界は包まれていた。
セレナの目は、鮮やかな色合いの飲み物に引き寄せられた。その美しいグラデーションはまるで夜空に輝くオーロラのようで、抗いがたい魅力を放っていた。彼女は迷わずグラスを手に取り、一口飲んだ。冷たくて甘い液体が喉を通り、わずかな刺激を感じさせる。しかし、彼女はその飲み物にアルコールが含まれていることを知らなかった。
初めてアルコールに触れたセレナは、ほんの数口で微酔いのめまいを感じ、周りの光が一層まぶしく、空気までもが軽く漂っているかのように感じた。彼女は目を細め、口元に微かな笑みを浮かべながら、夢のような夜に身を任せた。彼女はその状態を男の子に言わなかった。せっかくの特別な雰囲気を壊したくなかったからだ。
しかし、ほどなくして男の子は何かおかしいことに気づく。
「どうしたんだ?」彼は眉をひそめ、セレナが水中でよろめいているのを見て、ほとんど立っていられない様子を感じ取った。歩き方もふらついていて、まるで倒れそうだ。
「どうしてこんなにフラフラしてるんだ……遅くなって、眠くなったのか?」
セレナは返事をせず、ただ目をパチパチと瞬きながら、ぼんやりとつぶやいた。
「続けよう……明日の朝までずっと一緒に……」
男の子は無意識にため息をつき、すぐに彼女の状態を理解した。
「だから言ったじゃないか、変な飲み物を飲むなって。」彼はこめかみを押さえ、呆れたように言った。「仕方ないな、帰ろう。明日は遅くならないようにしよう。」
彼は手を差し出し、ほとんど歩けないセレナを優しく支え、彼女の体が軽く傾いているのを感じながら、彼女を連れて街を歩いた。二人はネオンの光が交差する通りを抜け、ホテルの部屋に戻った。
「俺はトイレに行ってくるから、先に着替えておいて。」男の子は彼女をベッドに座らせてから、そう言って浴室に向かった。
彼が出てきたとき、セレナはすでに着替え、無防備にベッドに横たわって深い眠りに落ちていた。髪が枕の上に散らばり、呼吸は穏やかで長く、顔がほんのり赤く、口元にはまだ微かな笑みが残っていた。まるでとても良い夢を見ているかのようだった。
男の子は静かに彼女を見つめ、ついにため息をついた。
「本当に気持ちよさそうに寝てるな……」彼は小声で呟きながら、ゆっくり伸びをし、自分のベッドに横になった。
しかし、目を閉じる直前、セレナが突然寝返りを打ち、ぼんやりと何かをつぶやき始めた。
「あぁ……あの飲み物、本当に美味しかった……もう一杯……全然酔ってないよ……」
彼女は夢の中で呟きながら、無意識に掛け布団を蹴飛ばした。
男の子は目を瞬き、仕方なく体を起こして、彼女の布団を再びかけ直した。動作はまるで慣れているかのように柔らかく、優しく。
「俺は君の保姆か?それとも使い走りか……」彼は小声で不満を漏らしながらも、最終的にため息をつき、「まあ、いいか」と諦めた。
彼が再び寝ようとしたとき、セレナは再び低い声でつぶやいた。
「……ありがとう。」
男の子は一瞬驚いて立ち止まった。
「ありがとう、今日は本当に……楽しかった……」
彼女の声は風のように軽く、夜の闇に消え入りそうだった。
男の子は静かに彼女を見つめ、しばらくその顔を見つめながら、彼女が本当に寝ているのか、ただ寝たふりをしているのか、わからなくなった。
彼はゆっくりと近づき、指を伸ばして、彼女の頬を軽く突いてみた。
「おい……寝たふりしてないか?」
だが、セレナは反応せず、静かに呼吸を続け、前よりも安らかな表情を浮かべていた。
男の子は少し目を伏せ、しばらく静かにしてから、静かに微笑んだ。
「……ありがとうなんて言わなくていい。」彼は小さな声で呟いた。その声はほとんど聞こえないほど小さかった。「僕も君の能力を利用していただけだから。」
夜は深まり、窓の外からのネオンが部屋に差し込んで、二人の姿を照らしていた。
その夜は、彼が思っていたよりもずっと長かった。




