第42話 12 最後の一週間
「いや。」
一瞬の沈黙の後、彼は静かに口を開いた。
「昨日の夜、俺……死ぬ前にどうしてもやりたいことを思いついたんだ。」
袋の取っ手を握る指に、わずかな力がこもる。
「そのためには……たぶん、一週間くらいかかる。」
「それに……お前の力も必要なんだ。」
彼はそう言って、ちらりとセレナを見た。
「頼む……最後の願いを、叶えてくれないか?」
しかし、セレナは即座に首を横に振った。
「なんで?」
少年は驚いたように彼女を見つめる。
「お前ならできるはずだろ?」
セレナは腕を組み、冷たく言い放った。
「別に、私はお前を助ける義務なんてないでしょ。」
彼女はわざと肩をすくめ、小さく笑った。
「いくら頼まれても、無理なものは無理よ?」
少年は苦笑し、ふっと息を吐いた。しかし、すぐに思い直したように言葉を紡ぐ。
「でもさ……全くお前にメリットがないわけじゃない。」
彼は口角をわずかに上げながら、どこか挑戦的な目を向けた。
「お前、"人生が退屈"って言ってたよな?」
「ならちょうどいい。」
「この一週間、俺がいろんな面白い場所に連れて行ってやるよ。」
「この辺の景色はよく知ってるし、それを"報酬"ってことでどうだ?」
「お前だって、そんなに気を抜けることなんて滅多にないだろ?」
セレナは一瞬、驚いたように目を見開いた。
しかし、次の瞬間には口元に小さな笑みを浮かべる。
「……やるじゃない、小僧。」
彼女はゆっくりと歩み寄ると、すっと手を伸ばし、少年の鼻先を指先で軽く突いた。
「いいわ。」
「その取引、乗ってあげる。」
目を細め、からかうような口調で囁く。
「小僧、運がいいわね。」
少年は少し顔をそむけ、眉をひそめた。
「……なんだよ?」
セレナはクスリと笑い、挑発的に言い放つ。
「まさか……照れてるの?」
「からかうなよ!」
少年は顔を赤らめ、小声で呟くと、足早に歩き出した。
セレナは肩をすくめ、くすくすと笑いながら、その後ろをついていった。




