第42話 07 「少年の瞳の輝き」
「そう言われてもねぇ……私、神様じゃないし。いきなり何十人ものお客さんを呼べるわけないでしょ?」
そう言って、肩をすくめる。
少年はしばらく考えた後、ふとセレナをじっと見つめた。そして、少し探るような声で聞いた。
「……ねえ、誰かの気持ちを変えられる魔法とかないの?」
「例えば、急にお腹がすいてくる魔法とか、俺の料理が無性に食べたくなる魔法とかさ。」
セレナはその言葉を聞き、少し考え込む。そして、突然何かを思い出したように、口元にいたずらな笑みを浮かべた。
「……あ、そういえば、あるよ。そんな魔法。」
彼女の瞳が妖しく輝き、口元に楽しげな笑みを浮かべた。
——1時間後。
ついさっきまで閑散としていた屋台の前には、今や長蛇の列ができていた。通りを埋め尽くすほどの人々が、焦がれるような目をして、少年の料理を待っている。
その光景を見た少年は、目を丸くした。
「……こ、こんなにすごい魔法だったの?!」
まるで信じられないものを見たかのように、驚愕する。
セレナは満足げに腕を組み、余裕の笑みを浮かべながら誇らしげに言った。
「当然でしょ。」
軽く髪を払う仕草をしながら、琥珀色の瞳がきらりと光る。
「みんな、あなたの料理が大好きになるように魔法をかけたの。」
「前にもこの魔法を使ったことがあるけど、効果は抜群よ。」
彼女は自信満々にそう言いながら、愉快そうに笑った。
少年は、行列をなす人々を見つめたまま、呆然としていた。
しかし、次第にその顔に、少しずつ笑みが広がっていく。
「これなら……今日だけで家賃分を稼げるかもしれないな。」
そう呟いた彼の声は、これまでとは違って、どこか明るさを帯びていた。
彼の瞳がふわりと細められ、その目元には、ごく自然な笑顔が浮かんでいた。
まるで、ようやく彼本来の年相応の表情を取り戻したかのように。




